ハルモニア、彼の名前には女神がいる。
出会った時は、変な奴だとしか思えなかった。
けれど、今では彼を思うとこんなにも苦しくなってしまう。
それを恋と簡単に形容してしまうのは、私の中で抵抗感に似たものがあり、第一私に対して母のように甘える彼に私の気持ちを説明した所で報われないのを一番分かっているのは、私だった。
それならいっその事彼の前から消えてしまおうと荷造りをしていた最中、彼は星を見に行こうなどと言って、私の腕を引いて行くのだ。
うるさい心臓と、静かな彼。



「ほら、やっぱり。星が綺麗だ」



見上げた空は、星が一面に広がっており、綺麗という言葉だけでは表せないほどだった。
あぁ、最後の思い出になるんだろう。
そう頭の中で考えながら、空を見る。
きっと、今下を向いたら目から涙が零れてしまう。
だから私は一生懸命空を見た。



「なまえも、ボクから離れて行くの?」



突然の問い掛け。
否定も、肯定も出来ない私。
静かな二人を月が優しく照らす。
彼の表情を伺おうとしても、帽子のせいで見えなかった。



「神様は、ヒドいね。僕等の未来を見捨てようとしている」



俯く彼。
その姿がひどく痛々しく、傷ついているようにみえた。
きっと、彼は私が彼の前から立ち去ろうとしてる事に気付いていたのだろう。
だから、彼はあんな問い掛けをしたんだ。



「………ゴメン、N…」

「僕は、君を愛してる。それでもダメなの?」



残酷な質問だった。
でも、確かに言えるのは、私と彼の愛の形が違う事。
私がどんなに彼を慕っても、それが報われない。
きっと、それは片思いと同じ。



「……ゴメン」



静かに言った言葉は、夜の闇に溶けて消えた。
月は、まだ私たちを照らす。



「あぁ、本当に。運命だなんて大嘘つきだね」



彼の言葉もまた、闇に溶けて消えた。



有神論、無神論
(いてもいなくても、私たちの最後は一緒だったのでしょう)

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Nは永遠に切ない
彼はきっと正しい愛仕方を知らないはず


20101212



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