後ろから聞こえる足音は確実に近付いてきている。
従って必然的に私の足も早く、早くと早さを求めた。



「なまえ!止まりなさい!!」

「い、嫌です〜!」



人を避けながら逃げる。
ホームから、ギアステーションへ。
二人分の足音は忙しくなる。
あ、ホームって走っていいのかな。



「な、なんで追いかけるんですか!」

「なまえがわたくしの帽子を返さないからですよ!」



そう、私はノボリさんの帽子を持っている。
その帽子の中に私のノボリさんへの気持ちをつづったポエムをふざけ半分で張り付けたのだ。
あわよくば、私の気持ちに気付いてもらえる、と思っていた。
けれど…彼は予想以上に帽子の中を見ないようで、気付いていない様子。
それならば、何ごとも無かったようにポエムを取ってしまうのが一番、と考えた結果帽子を拝借した。



「ご、ゴメンなさい!貸してください!」

「困ります!」



後ろを振り替える余裕もない。
けれど、分かる事は段々と足音が近くなっている事。
普段運動をあまりしないは私は、もう息は絶え絶えで脇腹にジワジワと鈍痛をもたらしていた。



「待ちなさい!」

「あ……!」



腕を捕まれ、急停止。
すぐ近くに息の切れた彼の姿。
…捕まってしまった。



「なまえ、帽子を返しなさい、」

「だ…ダメです!ちょっとだけ待ってください!」



ギュッと帽子を渡さまいと握り締めた。



「ま、まだダメなんです!」

「困ります、わたくしはその帽子が無いと仕事が出来ません」



ビク、と私の肩が揺れる。
彼を、困らせたくは無い。
目の前の無表情。
帽子が無い彼は少し物足りない気がした。



「………ゴメン、なさい。返します……」



す、と帽子を差し出す。
すると、彼はそれを受け取り帽子の中をみたかと思えば気付いていないはずの私のポエムを取り出した。



「え!ちょ、見ちゃダメです!」

「わたくし、知っておりました。この、貴方様の少し恥かしい手紙を」



………え?
頭の中が一瞬で真っ白になった。
目の前の無表情は、少し赤みを帯びているように見える。



「わたくし、恥ずかしい反面嬉しかったです」

「で、でも、そんな素振り…」



みせなかった。
いや、私が気付いていなかっただけなのかもしれないけれど。



「わたくしには貴方様の様な勇気はございませんし、この気持ちを伝えるのは少し怖かったのでございます。けれど、この手紙のおかげで踏ん切りが付きました。」



ドキンドキンと胸が高鳴り、顔には血が上って熱い。
今から彼が言う言葉。
私は一生忘れないだろう。



追いかけっこ、そして
(愛の言葉を聞かせてよ)

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何か、グダグダになっちゃた…


20101210→修正20101213



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