小さい頃から、お化けなどという類いが大の苦手だった。
それは今でも変わらず、夏になると必ずやるあのホラー特集はもう、悪魔のような存在で、私は見ないのだが見た友人等が内容を一々報告して来るのだ。
それのせいで私のホラー嫌いに拍車がかかったのはいうまでもない。
そんな私は、今まであらとあらゆる方法でその様な類いを避けてきた。
それはもう全力で。
しかし、時によってそれは意味をもたらさないものであり。




「ダメ!いや、いやぁぁぁぁあぁ!!」






ここはサブウェイマスターの休憩所と事務室の役割を果たしている一室。
そこには何故かデカい薄型テレビがあり、誰でも見れるようになっている。
その日は仕事が早く片付き、クダリさんとノボリさんを待つために事務室に来ていた。
しかしそこには既にクダリさんがおり、ニマニマ顔をより一層ニマニマさせてソファに座っていたのだ。
この様に二倍ニマニマしている時は何かよからぬ事を考えている事の多いこの男。
きっと今回も何か危ない事を考えてるに違いない。



「…ノボリさんは?」

「まだ仕事してるよ、当分かかるかも」



ふーんと生返事を返し、クダリさんとは反対側のソファに腰掛ける。
するとクダリさんはいきなり、"ねぇ!DVD見ない?"と、嬉々とした表情で言った。
まぁ、嬉々とした表情はいつもなのだけど。



「何のです?」

「ん?面白いの」



アバウトすぎてどんな内容か伝わらないが、クダリさんの事だしきっとアニメだろう。
そんな事を考えながら私はテレビが見える位置、クダリさんの隣りに座った。




『きゃぁあぁあああ!!!』

「きゃぁあぁあぁあぁあ!!!」



テレビの中で叫ぶ女優さんに負けないくらい叫ぶ。
これはクダリさんが見ようといったDVD。
予想外もいい所で、まさかのホラーだ。
勿論、見る前に逃げようとした。
なのに、"今外出たら……出るかもよ?"などとクダリさんがニヤニヤせずに言うのだ。
完全なる脅し。



『おい、早く車出せよ!おい、…うわ!うわぁぁあぁあぁ!!』

「ッ…………うッ!」



クダリさんの腕に絡みついて、目を瞑りながら頭を押しつける。
完全に、見えない。
けれど音だけでも十二分に怖く、恐ろしい。
私の考えでは、クダリさんはこの様なものは苦手なイメージだ。
すぐ上にあるクダリさんの顔を盗み見ると。
(うわ、ニッコニコ!)
私の予想を覆して先ほどより口角が上がっている。



『きゃぁあぁぁぁ!』

「ウキャァ!!」



まだ続くテレビ内での断末魔に反応し、またより一層腕を強く握る。
しかし、その掴んでいた腕がスルリと抜け、どこかに行ってしまった。
ビックリして弾けたようにクダリさんを見れば、…意地悪そうな笑顔。



「え、ちょ!どこ行くんですか!」



グッと服の端を引っ張って、どこかに行こうとするクダリさんを制止させる。
すると、それ以上上がるわけのないと思っていた口角がさらに上がって、あぁもう、絶対意地悪い事考えてる!



「飲み物、取ってくる」

「い、行かないで!お願い!」



そう言うと、彼は意地悪い顔を近付けて。



「行かないで欲しい?一人はヤダ?」

「や、だ…行かないで」



少し恥かしいかったけど背に腹はかえられない。一人だけは絶対に嫌だ。
私の言葉を聞いてニマァとして元の場所に座った。
DVDはまだ終わらない。



ドッペルゲンガー
(それはまるで彼らのようだ)

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タイトルと内容がマッチしてないのはご愛嬌って事で…。
読んでくださりありがとうございました!


20101205



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