「あ、」
後ろから聞こえた声に反応するように私は振り向いた。
いたのは真っ白い格好の車掌さんで。
ここに来たのはカナワタウンに行くためなのだけど…。
しかし、電車が多く正直迷子だった。
けれどここに知り合いなど当然いないから、途方に暮れていた所である。
そんな時に現れたのは彼、見た目だけをとればここに詳しそう。
取り敢えず、私はこの人に道を聞くことにした。
「あの、すみません。カナワタウン行きの電車ってどれですか?」
「ねぇ、キミってトレーナー?」
脈絡のない受け答え。
正直困ったけれど、はい、と答えた。
すると白い彼はやっぱり!といきなり叫び出すものだから、広いこの場所で周りの目が冷たい。
できれば静かにしてほしいが、初対面の方にそんな事は言えない。
「ねぇ!じゃ、ダブルトレインに乗ってよ!ぼくキミと戦いたい!」
だぶ………何を言ってるのか分からなく、私の頭はハテナでいっぱいだ。
にしても、カナワタウン行きの電車はどこなのだろう。
「あの…カナワタウンは……」
「楽しみだなぁ!アハハ!」
…聞いていない。
周りはすっかり彼を見なかった事にして避けている。
このままでは、カナワタウンにいけない!
「あ、あの……!」
「クダリ!!」
いきなり後ろから怒声が聞こえ、思わず口を噤む。
チラリと後ろを見れば、目の前の白い彼とよく似た黒い人がいた。
カツカツと黒い靴をならしながら歩いてくるその人は、何やら不穏な空気をまとっていて。
「貴方は何度言えば分かるのですか!無線機にも出ないで!ほら、挑戦者が来たそうです。電車に戻ってくださいまし」
と、ほとんど息継ぎなしに言った彼を思わず凝視してしまう。
すると、彼は私に気付いたのかくるりと私に向き直った。
「おや、お客さま。お見苦しい所を見せてしまい大変申し訳ございません。今日はどのような用件でしょうか?」
業務的な声。
けれど白い彼よりは話が通じそうだ。
「あの、カナワタウン行きの電車ってどれですか?」
「…カナワタウン行きはつい先ほど出発してしまったのですが…」
ガーンという効果音でも付きそうなくらい、私は落ち込んだ。
このままではカナワタウンにいる兄に会えないではないか。
「次の電車までには少々時間がございます。そこで、よろしければ是非シングルトレインにご乗車していただきたい」
「ちょっと待ってよノボリ!彼女は先にダブルトレインに乗るんだよ!」
さっきっからダブルやらシングルやらなんなんだろう。
彼らの口論を何となく聞き流す。
すると、やっと話が付いたのか黒い彼がこちらを見る。
「貴女様にはマルチトレインにご乗車していただきたいのですが、よろしいでしょうか。貴女様はとても強そうですし」
強そう、という言葉に少し胸が高鳴った。
それはまるで、勧誘のような言葉だったけど。
「分かりました、私それに乗ります」
まんまとだまされたのに気付くのは数分後の事。
ナンパのようですね(ううん、ナンパでした。)
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この後何されるんでしょうね。
きっとクダリとノボリどっちと付き合うとかって言う話に飛躍するんでしょう。
20101204