「ノッボリさん!」
目の前の少女の登場に内心、少し驚いた。
今は、もうすぐ業務時間も終わるような遅めの時間だ。
いつの間にか事務室に忍び込んでいたなまえはニコニコと笑顔でこちらを見つめている。
身近にはいつもニヤニヤしているクダリがいるが、彼女の笑みはクダリとは違う何かがあるように見えた。
「ノボリさん、もうすぐ仕事終わりですよね?一緒に帰りましょう!」
そのために、わざわざこんな場所まで来たのかと思うと、少し笑みが零れた。
周りから見てもわたくしの顔はあまり変化をしていないだろうけど。
「あ!あ、あ、ああぁぁ!」
いきなり叫び出すなまえに、本日二度目の驚きを迎えた。
目の前で、頬を朱に染めて驚いたようにわたくしを指差している。
「なまえ、人を指差すのはどうかと思うのですが」
少し呆れを含んだ言い方に、なまえは違います!と反論をした。
真っ赤な顔を目一杯近付けて、あの、と言葉を切り出す。
「今、笑いましたよね!?」
興奮したように言うなまえのキラキラした瞳の中にはわたくしの驚いた顔を映していた。
いつも一緒にいる、クダリでさえわたくしの笑みには気付かない。
それなのに、この少女は気付いたのだ。
わたくしの笑みに。
「やっぱり、笑ってましたよね!!わぁ、スゴい!初めて見ました!」
キャアキャア嬉しそうにはしゃぐ姿を見つめながら、ふと感じた疑問を少女にぶつける。
「なぜ、気付いたのですか?わたくしの笑顔に…」
さっきまで騒いでいたのにいきなりキョトン、と黙ってしまった。
そして当然のごとくこう言った。
「だって、ずっと見てますもん…ノボリさんの顔」
これは、愛の告白と取っていいのだろうか。
恋する乙女は無敵なの!(言った事の意味に気付き少女が赤面するのは数分後の話)
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ラブラブ系…ですかね?
読んでくださりありがとうございました!
20101204