星空の夜に





レオエレ前提でエレフ+オルフ
ちょっと最後シリオル描写










奴隷部隊が根を張る野営地。
そこから少し離れた丘の上で、奴隷部隊の大将、エレフは夜風に触れていた。物思いに耽る表情で、輝く星の光る夜空を見つめて。

「エレフ」

物思いにふける彼に、ふと後ろから青年が声をかける。声色にも聞き覚えがあったエレフは、特に驚きもせず、振り返らず淡々と返事を返した。聞き覚えの有る青年の名を。

「オルフか」

「おや、よくわかりましたね、私だと」


光栄です、と言い一礼をしながら、オルフは許可を得ることもなくエレフの横に座る。まるでそれが自然だと言うように、エレフもオルフも気に止めない。
まるで、大将と部下の間柄には見えないだろう。

「俺のことを『エレフ』と呼ぶのは、お前と……レオンぐらいだから…」

そう言って瞳に影を落とす姿はとても小さく、息を吐くその姿も弱々しい。
それも仕方のない話、今は奴隷部隊大将のアメティストスではなく、ただ一人の、エレフセウスという恋する青年なのだ。その姿を知る者は他には少ない。

「獅子王…レオンティウスさんのこと、考えてましたか?」

「か、考えてない!」

「照れずとも、本当のことでしょう?素直になってください、エレフ」

「……」

一度否定し戦慄いた口を閉じると、エレフは自らの膝を抱えてしまった。より一層小さく小さくなってしまった彼を見て、オルフは苦笑いを溢した。今回は相当な落ち込みのようだ。
この奴隷部隊の大将は、相当感情の起伏が激しく、その為、怒りも大きければ落ち込みも大きい。
これも誰もが知っているわけではなく、ここにいる側近のオルフや、同じく側近のシリウス、あとは…レオンティウスぐらいだろう。

「レオンさんに、お会いしたいのですか?」

エレフの、膝を抱える手に力が入る。ぎゅ、という布擦れの音が響き、指先が少し白くなっていた。
そのまま、エレフは唇を開く。

「…会いたいけど、レオンは敵の大将……このままでいいのか?」

「……」

「アルカディアの王…憎かった。倒さなければいけない、倒さなければ戦争は終わらない相手だ。………確かに憎かったけれど。……レオンのことは、違うんだ。でも、このままだとミーシャへの想いはどうしたらいい?」

「ミーシャ…妹さんですね?」

「ここで、レオンを許してしまったら…ミーシャはきっと俺のことを許してくれない…」

どうしよう、と消え入るように呟くエレフの表情は、今にも泣きそうな程。
ああ、この大将は泣き虫でしたね、とオルフはふと思い出した。

(あの獅子王ならば、この状況だと優しく抱き締めて慰めてやるのでしょうか。
だけど、自分はそんなに甘くない。自分は、恋人じゃないんです。
ならばここは、叱咤するのが当然でしょう?)



いまだ膝を抱え込んだままのエレフ。オルフはおもむろに、そのエレフの頭をはたいた。勿論力加減はつけて、しかしその負の思考が覚めるように強く。
その絶妙な力加減にエレフは思わず声を上げ同時に顔を上げオルフの顔を見た。

「いっ…!?」

「エレフは、勘違いしています」

「な、何?」

「そりゃ、あの獅子王は爽やか笑顔でタラシだし空気読めないし皆のエレフだというのに手を出したりするし他にも色々、そりゃあもう色々問題点があって、あの方の手中にエレフがいると考えると虫酸が走る思いですが…」

「大体合ってるが言い過ぎだぞオルフ」

「でも、貴方の選んだ、望んだ方でしょう?」

「!」

オルフの最後の言葉、それがしっかりと胸に刺さったらしいエレフの瞳が大きく開かれた。一目で驚愕の表情だと判る。
その驚愕が否定か肯定か、どちらかはわからないけれど、何が道標になるのならば、とオルフは続けた。

「ミーシャさんは、エレフの望んだ、選んだ方を……エレフの幸せを無下にするような妹さんでしたか?」

「……」

「きっと、彼女も貴方の幸せを祈っていらっしゃいます。幸せに、おなりなさい…エレフ」


貴方の幸せを私も願っています、と続け微笑むオルフ。その表情を見ながらエレフはゆっくり瞳を揺らした。そのままじわりと、瞼に溜まり瞳からこぼれ落ちる滴。ああ、泣き虫ですね、とオルフは苦笑しながら指で涙を拭った。

「いいのかな、俺は、レオンが好きだ」

「うん」

「好きで、いいのかな、許してくれるかな?」

オルフの言葉にエレフが何を思ったのか…。それはエレフにしかわからないけれど、自分の言葉が、少しでも彼に届いたのならそれでいいと。
彼の笑顔が見れるならば、幸せだと、オルフはそう思った。

たとえ、少し胸が痛くても
少し悲しくて切なくて、泣きたくても………

「大丈夫、貴方の幸せは皆の幸せです」

「オルフ…」

「もし、獅子王が貴方を泣かすような真似をする日が来ましたら、私は遠慮無く貴方を拐いますからね」

屈託の無い顔でニコリと笑うオルフ。勿論冗談ではなく本気で、故に見る人が見れば少し黒い笑みであった。
だがしかし、それとは対照的にエレフの表情はきょとんとしたものだった。相変わらず瞳は涙を浮かべたままだけれど、気にせずエレフはそのまま言葉を放った。

「それは、シリウスが怒るのでは?」

「…………は?」

「だって、お前とシリウスは恋仲だろう?」

「はあぁぁ!!?」


思いがけない発言、まさかそんなこと言われるとは思ってもみず、オルフの頬に一瞬で朱が宿る。それこそ、耳まで真っ赤に。
金魚のように口をパクパクと開閉させ、次の言葉が出てこない。頭が完全にショートしてしまっている。

「違うのか?」

「……っ違いますよ!」

「そうなのか…でも、お前はシリウスがすきだろう?」

「そ、それは……!シリウスは他と違って優しいし、けしてかっこいいとは言えないのになぜかとてつもなくかっこよく見えるときもあるし、私を受け入れてくれるし、いいかもとか思うときがありますが………違います、恋とは絶対違います、断じて、ええホントに」

「メロメロだな」

「だから違いますって!」

「ありがとうオルフ。俺も頑張れそうだ。だからお前の恋も、全力で応援する」

「だから違いますって!ああでもいい笑顔…!頑張ることはいいことですが応援は遠慮します」

「今から、レオンのところに行ってくる!今なら素直になれるかもしれない!」

「ええ今からはダメですよ!単身で敵陣に突っ込まないでってああああエレフ待って行動が早いです早すぎますー!!!」













オルフは、ほんの少しだけエレフのことが好きだったんです。


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