Trial!
ちょっとレオンが受けくさいというかエレレオくさい描写があるので注意。でもレオエレでシリオル。
「ねえ、オルフ…大将…何ですか、それ」
いつもの昼飯タイム。勿論何故かレオンもいます。まぁそこはいつものことというご愛敬で。
それはさておき、シリウスがポカンとした表情で指摘する“それ”とは、頭に生えた……
「「猫耳」」
と、ご飯を頬張りながら平然と答える、猫耳の生えたエレフとオルフ。
あまりに平然と答えるものだから、シリウスはああそうかそれならいいんだ、ところでご飯おいしいなぁ、と納得してしまいそうになるが、違うだろ!と直ぐに自分に対してつっこんだ。
「いやいや二人ともなんでそんな普通に受け入れてるんですか!?」
「だって、頭の上に飾りが出来ただけで何の支障も変化もないし…ちゃんと音は俺の耳で聞こえる」
「耳が四つあるってのもおかしな話ですよねー。あ、エレフ、そこの醤油取ってください」
「ん」
「ありがとうございます」
普通に、ナチュラルに、これに対しての話が終わった。
気にしてないならいっか、とほんの一瞬シリウスは思ったが、いやいや駄目だろ!とまたしても自分にツッコミを入れた。きっとシリウスがいなければこの話は成り立たなかったであろう。
「原因とか、いいの!?わかってるの!?」
「え、レオンが俺とオルフの朝食に一服盛ったらしい」
「全く…盛るなら一言言って欲しいものです」
混乱を極めるであろうと思った原因は一瞬にして判明した。しかも極近くに。
シリウスはギギギと音を立て、先程から普通に食事を取っているレオンに体を向ける。
「レオンさんレオンさんどうやら貴方は俺の平和を脅かすのが大好きみたいですねコノヤロウ」
「シリウス君目が座っているよ。あと口調も若干違うね、落ち着いて」
「落ち着いていられますか!っていうか当の猫耳生えた本人たちはなんでああも普通に受け入れてたまごかけご飯をもりもり食べてるんでしょうね大将頬っぺたにご飯付いてます!!」
「え、マジで?ありがとー」
「私に話しかけつつ、エレフの頬についているご飯粒を見つける…鋭い洞察力だね、感心するよ」
「感心しないでいいです!!」
「それにしても、もう少し慌てるとか照れるとか…あの二人はしてくれてもいいのにね。その為にオルフ君とエレフに盛ったのに……でも猫耳のオルフ君は可愛いだろう?」
「そりゃ勿論、照れていても相当可愛いとは思いますし気にしてないってのもなかなか愛嬌があって可愛いですけど…って違う違う!危うく流されるとこだった!」
取り敢えず、シリウスは落ち着こうと大きく息を吸い、それを吐いた。この場で自分が混乱を起こしたら終わりだと言うことを、シリウス自身しっかり自覚している。
「一応聞きますけど、盛った薬の毒性は?」
「無いよ、私もカストルに飲ませてみたが耳以外変化は無かった」
「ちょ、カストルさんも被害者…!………あと、薬の持続性は?」
「カストルは…一日だったな…ああでも、某ラコニア軍の某赤髪の義兄上殿は三日ほど持続したから…」
「おま、スコルピオス殿まで猫耳に…!」
「まぁ人によりけりだろうね、長くても五日程だと思うよ」
「最後に聞きますけど………一体何処から仕入れたんですか…?」
「先日、ここから帰る道中で、見たことの無い服を着た方に頂いたのだよ。名前は…ええと…さ、サバ…?なんだったかな、黄昏の賢者だと言っていたのは覚えているが。余ったからあげると言われたので、有り難く頂戴した」
「…………なんかどっからつっこんでいいやら解りませんがな……」
シリウスはガックリと項垂れる。
地平線を軽々と飛び越える胡散臭い黄昏の賢者の存在はさておき、もうどうしていいやら…シリウスは頭を抱えた。いや、もうどうもしなくていいのか、となかばやけ気味でもあるがそうもいかない。
すると、ご飯を食べ終ったのか、エレフがレオンに寄ってくる。
「レオンー」
「どうしたんだい?エレフ」
「薬、見せて」
「ああ、いいよ」
レオンはエレフの言葉に、懐から出した薬を素直に渡した。
小さな香水瓶のような、綺麗な容器にオルフも興味を湧かせる。
「綺麗ですね…」
「うん、キラキラしてる」
エレフはそう言いながら、瓶の蓋を開けた。
シリウスとレオンは首を傾げる。
「大将、何するんですか?」
「エレフ、また飲んだからって相殺されることはないからね?」
「うん、わかってるよ」
「じゃあ、何をするんですか?」
「んー?」
オルフの言葉にも生返事を返す。ここにいる皆がエレフが何をするかわかっていないのだ。
そしてエレフは、おもむろに瓶に唇をつけ、くい、と口に含んだ。その行動に、三人とも度肝を抜かれる。先程相殺されないと言ったレオンの言葉は聞いていなかったのだろうか。
エレフが唇を離した時には瓶の三分の二程無くなっていた。それは飲んだわけではなく、まだエレフの口内に残っている。回りは相変わらずポカンとしたままだ。
蓋を閉め、残りの液体の入った瓶をオルフに渡してレオンに近寄るエレフ。
「え、エレフ…?」
エレフの突然の行動に、あのレオンすらも戸惑う。
しかし有無を言わさず、エレフはそのままレオンの唇を奪った。
「!?」
「た、大将?」
「エレフ!?」
皆の驚く様子は気にせず、エレフはちゅーっとキスを送った。
レオンは座っていてエレフは立っている、その状態のキス。しかもいつものエレフとは違い、エレフから舌を差し入れたことにより、必然的にエレフの口内の液体がレオンの口内に移った。しかし尚も唇を離さず舌でレオンの口内を遊び、苦しくなったレオンは口内の液体を思わず飲んだ。
―――ゴクリ。
と、喉が動いたことを確認したエレフは唇を離し、飲みきれなかった、レオンの口の端から溢れた液体を舌で舐めとった。
軽く放心するレオンの頬を両手で包み、見下ろす状態でエレフは優しく微笑みながら…
「これで、夕飯辺りにはレオンも猫耳仲間だな」
と、言った。
まだ状況の理解できないシリウス、放心するレオン、オルフだけは、なんとなく理解する。
「ああ、自分達だけに付いてるって不平等さが嫌だったのですかね、エレフは」
「え、あ、そうなの?それにしてもレオンさんと大将が目の前でキスしてるのに、お前何も言わなかったな…」
「獅子王があれほど呆けた顔をするのは珍しいのでね、逆に楽しませていただきましたよ」
オルフがにっこりと笑う。シリウスも、そうですか…と言いながら苦笑いを溢した。
「さて、あとはシリウスですね」
「え」
その言葉に、エレフとレオンも、静かにシリウスを向く。
「そうだね、シリウス君だけだ」
「れ、レオンさんもう復活したんですか?」
そうシリウスが言ってる間に、エレフが後ろからシリウスの動きを封じる。なんたる素早さだろう。流石スピードに定評のあるエレフ。
「俺、シリウスの猫耳見たいなー」
そう言って、満面の笑みのエレフにガッチリ腕を掴まれた。
「オルフ君、今がチャンスだよ」
「言われなくてもわかっていますよ」
「え、ちょ…!」
「大丈夫…怖いのは一瞬で終わるから…」
「大将!発言が攻めくさい!ってか自分で飲む!自分で飲むから!!オルフが口移しで飲ませてくれるなら考えるけど!」
「そんなことするわけないじゃないですか。カパーと空いたシリウスの口に瓶を捩じ込むだけですよ」
「やめてぇぇぇぇ!!!」
「観念しろ」
「観念しなさい」
「観念した方がいいよ」
ニッコリと笑う三人、この後、シリウスの絶叫が響いたのは言うまでもない。
終
猫耳に動じない受け子達と、放心するレオンと、小悪魔的エレフと、皆のアイドル(違)シリウスを書きたかっただけです。
猫耳4人の話も書いた方がいいのかしら。