いつからだったか、奴隷と成り下がった自分が発言しても何も希望がやってこないと思っていた。
言葉を発する度に殴られ、蹴られ、発言の自由さえ奪われた。最初は涙を流して悔しさに抵抗したが、次第に、言葉は無駄なものと思い始めてしまった。
ならば、言葉など、声など無駄だと、声帯を震わすことをやめた。声を殺す方が余程楽だったから。
発言し、無視され、虫のように扱われるぐらいなら、最初から言葉など知らない方がいい。そうして、段々と声の出し方を忘れた。


しかし、それから何年経っただろうか。
気が付いたら自分の目の前に、一つの希望が立っていたんだ。それより前のことは殆ど覚えていない。それ程までの、希望の焔。
逆光でよく見えないけれど、私が感じた希望の光とは真逆な、憎悪と復讐に満ちた、それでも強い意志を持った紫眼。端正な顔立ち。
手に持っていた短剣を私の喉元に突きつける。
殺されるのか、それもまぁいい……と思った瞬間にその人物は、私の前にカランと剣を落とした。そして彼はこう言ったのだ。


『その剣を取る勇気があるなら、私と共に来るがいい』


そして彼は、黒いマントを翻し、早足でその場を去った。


―――勇気?勇気など、とうの昔に捨てた。声と一緒に。
しかし、あの方は私を必要としてくれた。自らの剣を残してまで、私の存在を認めてくれた。ならば、断る理由などどこにあるのだろう。
ぎゅっと、その剣を手にすると、私は強く決心した。

―――私は彼に一生を捧げる誓いを、この胸に立てた。


「っお待ちください…!」


声の出し方を忘れていた。声帯の振るわせ方を忘れていた。
しかし彼を引き留める為には声が必要なのだ。
勢い余って駆け出すと、カラカラと渇いた喉から必死に音を発する。上手く出たかは解らないけれど、久しぶりに聴いた私の『音』に、振り向いてくれる『彼』に、涙が出そうになった。


―――こうして私は……オルフェウスは、アメティストスに必要とされ、奴隷部隊の初員になることになったのだ。






















オルフとアメの出会い。
失語ではないけど、喋らなかったということです。
あの「お待ちください」が、数年越しの声だったら萌える(ぁ
オルフはエレフに『憧れ』に近い感情を持っているんでしょうね。

オルフが初隊員なのは私の妄想です(殴


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