友人





レオエレ前提の、エレフとオルフの話



















今日何度目の溜め息だろうか、エレフは深い息を吐いた。


(最近、レオンが来ない……)


いや、敵なのだから来ない方が正しいは正しいのだが。
それに、レオンが今までそうしていたようにエレフがレオンに会いに行けばいいだけなのだが、いまいち度胸が足りず足を運ぶことができない。エレフはまた大きく溜め息を吐いた。
もしかしたら自分に飽きてしまったんではないかとか、嫌われてしまったんならどうしようとか、日が経てば経つほど思考は急降下していく。

「………レオン」

「レオンさんに会いたいのですね?」


後ろから突然話しかけられ、エレフはうっひゃあと情けない声が出そうになるがなんとか押さえる。
エレフが後ろを向くと、やはりというか、予想した通りの姿があった。声だけで解ると言えば当たり前なのだが。

「び、ビックリさせるな、オルフ…」

「おや、驚かせてしまいましたか、これは失礼しました」

ニコリと微笑み、一礼をするはとても優雅な姿だが、心なしかその笑顔にはしてやったり的な表情も見てとれる。
絶対わざとだな、とエレフは思うが言わない。代わりにまた溜め息をついた。

「エレフ、あまり溜め息ばかり吐いてると幸せが逃げますよ。そんなにレオンさんにお会いしたいのですか?」

「そんなわけ!………ない、わけじゃ…ないけど………」

語尾がごにょごにょと小さくなる。視線が泳ぐ。オルフはしっかりいい笑顔でエレフを見つめた。

会いたい。物凄く会いたい。
それがエレフの素直な思いだった。

「でも、不安なんだ…嫌われていないかとか、鬱陶しいと思われていないかとか…」

「………エレフにこんな思いをさせるなんて…今のうちに奪ってやりましょうか…」

「え、だからそれはシリウスが」

「それ以上言うと殴りますよ竪琴で」

エレフが黙ったのは言うまでもない。
しかし、どうしたものか…とオルフは思う。
こんなにもレオンが顔を見せないのは確かに初めてで、オルフはせいせいしてる…というかこれが正しい本来のあるべき姿なのだが、エレフの落ち込みようは酷い。恋する乙女とでも言うべきだろうか。
だが、オルフに元気づける手立てはない。エレフをレオンに会わせるしか、他無いのだ。
はぁ、とオルフまでも溜め息を吐く。先程幸せが逃げると言ったのはどの口か。

「エレーフ」


オルフはにっこりと微笑んで、何だ?という顔のエレフの両頬を両手で叩く。ペチンと、痛いような痛くないような音が響いた。

「痛っ…!何…」

あまり痛くなくても痛いといってしまうのは人間の反射。
何をするんだ、と言おうとしたエレフだったが、気が付いたらオルフの顔が近くにあり息を飲む。
まごうことなく美人な部類に入るオルフの顔をこんな近くで見たのは初めてなエレフだったが、改めて「綺麗な顔だなぁ…」と見とれてしまった。
いやしかし、こんな顔を近づけられ何をされるのかと身構えたが、それは要らぬ心配で。頬を両手が包んだまま、オルフは額同士をコツリと合わせた。

「……?」

「好きなのでしょう?レオンさんのこと。だったら、信じてあげませんと」


オルフが、エレフにだけ聞こえるような小さな声で言う。
額を合わせたまま目を瞑り、言い聞かせるように。
エレフは、そんなオルフをじっと見る。

「誰だって、愛する人と会えなくなると不安になりますよね…。でも大丈夫、貴方達の絆はこの私がしっかり見てます」

「………オルフ…」

「心配ならば、明日…会いに行くといいでしょう。勿論、行くならば道中は私もお供させていただきますけど……」

オルフが瞼を上げ、エレフの紫眼を見る。そうしてオルフはふわりと見たこともない優しい笑顔を浮かべた。

「エレフ…だからそんな顔しないでください…私は貴方の笑顔が見たいんです」

「……オルフ……ありがとう」

紫眼が涙に揺れた。
「あー」と、なんとなくオルフは覚悟していたが、やっぱり…と思いながら優しく抱き締める。
エレフも、ぎゅうとしがみついた。すんすんと泣き声も微かに聞こえる。

「ほらほら、いい大人が泣かないでくださいよ」

「うー………」

まったく、世話の掛かる総大将だ…とオルフは苦笑した。














なんか前に似たようなの書いた気がしますが、おでこコツンが書きたかったのでつい。
オルフは、自分が恋をしてから優しくなりましたエレフの前でだけ(笑)


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