流星の謳




エレフとオリオンのシリアス。
自分設定の自分解釈文なんで、辻褄の合わない部分があると思いますがご了承ください。
メインはエレフとオリオンですが、レオエレ描写有り。シリオルは無いと思われます。













「大将、それ、誰ですか」

「…………」

シリウスが指す「それ」とは。
エレフの後ろからべったり、ぎゅうぎゅうと抱きついている、緩いウェーブのかかった長い金髪を持つ、青年。

「新しい隊員ですか?」

そんなわけないと思いながらシリウスがそう問うと、少しげっそりとやつれたような、心なしか青ざめたエレフが無言で首を横に振る。

「じゃあ誰………」

「オリオン……」

「え?」

「こいつ、死んだ筈の、俺の元友人の、オリオン」

「………ええ!?」











【流星の謳】











「と、言うわけで、トイレに行こうと部屋を出たら、こいつが突っ立ってたというわけだ。お陰で出るもんも引っ込んだ」

「はぁ…」

「それから抱き付いて離れてくれない」

「はぁ…」

淡々と説明をするエレフと、空返事を繰り返すシリウス。シリウスの後ろにはオルフが立っているが、彼は何も言わない。
オリオン、とおぼしき人物は未だにニコニコしながらエレフに抱きついている。

「え、っていうか、オリオンさんのそっくりさんってわけじゃないんですか?」

「いや、その線は薄い。こいつオリオンしか知らない俺の幼少の奴隷時代のことを事細かに知ってた」

「そう、なんですか………って喋れるんですか?」

彼はさっきからニコニコと笑顔を晒すだけで言葉を発しないのだ、シリウスが「喋れない」と勘違いすることも頷ける。

「結構喋るぞ?夜中過去話に華を咲かせた」

「結構楽しんでますね大将」

エレフがあははと苦笑する。が、笑っている状況ではないのだ。
オリオンは死んだ筈。それは何度も何度も確認したこと。
だからお前はなんなのだ、と問えば、オリオン、としか返ってこない。
エレフは正直、どうしていいかわからないのだ。死んだ筈の、胸に止めて漸く受け入れた友人の死の、そして目の前にいる人物の存在。

「………取り敢えず、こいつは俺が監視するから、あまり回りに話を広げないように」

「あ、はい」

「それと、レオンには言わないでくれ。こっちに来たら適当に追い払って、説明が面倒だ。以上、俺は部屋に戻る」

そう言葉を残し、エレフはこの場を去った。勿論ぎゅうと離れないオリオンも一緒に、時折遠くから離れろ!と声が響いたりもする。
その後ろで、今度はシリウスが苦笑いをした。

―――確かに、この状況はなんと説明していいやら。

エレフにべったりとくっつくオリオン、というこの現状を、見かけによらず嫉妬深いレオンに納得のできる説明が出来るかと言えば、不可能に近い。
というよりか、追い払うのにも必死だ。

「あー大変なことになったなぁ…なぁ、オルフ?」

「………えぇ…」

「…そう言えば、あんなにべったり大将にくっついてたのに、お前なんにも言わなかったな」

珍しい、とシリウスは笑う。
しかしオルフは険しい表情で遠くを見ている。その様子に、流石にシリウスもオルフの様子が少し違うと気付いた。

「………どうした?」

「……死んだ者がまたこの世に現れるなんて、そんなこと、不可能に近い…」

「…オルフ?」

「けれども、もし可能性があるのなら…私は…………」


そう言って、オルフは口を閉じ、瞳を閉じて祈った。







―――――――――――――――




「エレフ!」

「だから、お前ホントにオリオンなのかよ」

「そう言ってるじゃないか!ほら、体は成長したけど面影はあるだろ?」


そう言って自分の顔を指差しニッコリと笑うオリオン。確かに笑顔はあのときのままだった、あの陽気なオリオンと同じ顔。
だがエレフは何度も、何度も確認した。信じられなくて、本当なのかと、色々な手段を用いて確認した。
それでも返ってくるのは“死”という言葉のみ。
その言葉を信じるより他無かった。何度もその言葉を与えられれば受け入れるしかない。

「………」

「エレフ?泣いてるの?」

「っ…ばっか!泣いてねぇ!」

エレフが毛を逆立てるようにそう言えば、よかった、とオリオンは笑う。続けて、エレフには笑っていて欲しいから言った。
この時既に、エレフの中には第六感的な違和感があったのだが……気付かぬままそれは宙に消えていった。







―――――――――――――――



その日の夜。
秋もせず旧友との会話に華を咲かせ、そして気付かぬ間にエレフはパタリと眠ってしまった。
何時間か、それこそ丑三つ時を越えた深夜に、ふと目を覚ます。
寝起き眼を擦り少しずつ覚醒すると、今までとは全く違う、エレフの見たことのない表情が欠損したの、どこか寂しげなオリオンの横顔が窓の外の星を見ていた。

「………オリオン?」

「…ああ、エレフ。起きちゃった?」

エレフが声を掛けると、こちらを向き、笑顔に戻る。しかしどこか寂しげな表情を残したまま。それは儚げと言っても差し支えがない、オリオンらしからぬ笑顔だった。

「寝てても良かったのに…」

「いや………お前は寝ないのか?」

その言葉にオリオンは苦笑する。

「………エレフ、星って綺麗だよね」

「あ、ああ……」

「俺は、死んだら………あの星の一つになれると…信じてたんだ…」

「オリオン……?」

「……………エレフ、おやすみ。しっかり休んで………」

そう言って、エレフの瞼の上に手をかざすオリオン。
瞬間、強烈な眠気が襲い、エレフはクラリと床についてしまった。まだ聞きたいこと、話したいこと、違和感は沢山あるのに。
エレフが意識を失う寸前、僕の分まで……という言葉が聞こえたが、それは夢か否か、誰にもわからない。




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