Mud in your eye.
レオエレの甘(軽くギャグ)…かな?
「「乾杯」」
カキィン、と甲高い音を響かせ向い合わせで杯を交える二人。エレフセウスとレオンティウス。
場所はレオンの自室であり、何故敵大将を部屋に招くことが出来たのかはMoira及びカストル辺りのみぞ知ることである。深追いをしてはいけない。
杯に口をつけ、二人は静かにくいとワインを流すし一息ついた。
「美味しいだろう?エレフ」
「ワインは初めて飲んだ…安い酒も中々だけれど、これもいいな」
目に見えて上機嫌そうに言うと、もう一口エレフは喉に流す。そんなエレフの様子にレオンも表情が綻び、続くように一口飲んだ。
ここにはうるさいオルフもシリウスも、カストルさえもいない。二人だけの時間、二人だけの空間。
そんな滅多にない特別な今と言う時間に、エレフはなんだかとてつもなく嬉しくなり表情を緩ませる。それをアルコールのせいにするのは、酔いが回るのは、まだ早すぎるだろう。
「エレフ、機嫌がいいね」
「ん、そんなことはない」
「エレフの笑顔を見てると、私も嬉しくなるよ」
「………有り難う…」
いつもの歯の浮くような恥ずかしいセリフも、今はとても嬉しく感じてしまう。ここまで素直になれる自分が少し違和感で、エレフはこそばゆくなった。
だけど、それすらも心地いいと思うのは色々と末期な証拠かもしれない。今日ぐらいはいいだろう、と自分を甘やかした。
「ところでレオン」
「ん?なんだい?」
「お前、飲むスピード早いな」
そう、エレフが喜びとこの暖かい感覚に浸っている間、目の前のレオンはさっきから見かけによらずぐいぐい行ってるのだ。
エレフも強いとは言えないが弱いとも言えない、だけれどそれなりのスピードで飲んでるつもりなのだがそれ以上。
王族なのだから、特にレオンティウスという人物をよく知っているからこそ、もっと優雅に味わうように、それこそ舌で転がしたりワインの蘊蓄を片手に飲むものだと思っていたエレフは少々度肝を抜かれていた。
「そんなスピードで酔わないのか?」
「どうやら私はアルコールに強いようでね」
「へえ…」
強いならいいか、と放置していたのがエレフは後々後悔をすることになる。かもしれない。
エレフがほろ酔いし始めた頃、レオンが徐に口を開いた。
「エレフ、私のことは好きかい?」
ムードもへったくれも過程も無いいきなりのレオン言葉に、エレフはワインを口に含んだまま固まった。吹き出さないだけマシだろう、このままじゃレオンに向かって噴射していた。それだけは避けたい。
慌てて口内のワインを飲み、改めてレオンに問う。
「なんでいきなり?」
「いきなりではないよ、私はエレフからの『愛してる』という言葉を聞いたことがない」
「そ、それは…」
「私はエレフセウスを愛している。この世界の誰よりも君を愛し、幸せにしてあげよう」
「レオン…」
じんわりとときめきつつも、レオンは酔ってるのか?とエレフは疑いの眼差しを向ける。いや、酔っているとしてもそれはアルコールによって栓が外れたレオンの感情だ、意味は同じだろう。
だがしかしレオンの視線は真っ直ぐでとても酔ってるようには見えない。ただ、今このタイミングで唐突に言うということは、レオンは相当気にしていたんだなとエレフは思う。
レオンは、人の答えをけして急かさない人間なのだ。その人が『問う』ことには相当意味がある。ならば、しっかりと真っ直ぐ答えてあげなければならない。
「レオン、俺は……!」
「このレオンティウス、女を貫く槍は持っておらぬが、エレフを貫くナニは、持っている」
「お前酔ってるだろう」
エレフは今確信した、レオンは酔っていると。胸の奥のじんわりした暖かい愛情も一気に四散し、素早く冷静に突っ込みを入れた自分を褒めてやりたいとエレフは思う。
普段紳士で恥ずかしいほど言葉を飾るレオンが、まさか素面でこんな直線的な言葉を吐くわけがない。寧ろ初めて聞いたぐらいで録音したいと思う程度には驚いた。
つまりは、レオンはアルコールに対して確かに弱くはないようだけれど、エレフと同じく強くもないのだろう。それでいてスピードか早い。
しかしレオンは見事に顔に出ないタイプのようで、それが強いと思われている原因のようだ。しかも本人には自覚症状がない。
これは相当厄介な酔い方だぞ、とエレフは思った。
「酔ってなどいないよ、ただ純粋に、エレフと一つになりたいと思っているだけだ」
「それが酔ってる証拠なんだよ」
でも、これがレオンの本心なのだ。
お酒は普段抑えてる感情を全面に出す場合が多い。つまりはそれだけいつもエレフが愛しくて愛しくて仕方ないのだ。
「エレフ、愛している。エレフは私を愛していないのかい?」
そう問うレオンの瞳が不安に揺れている。
(ああ、知らぬ間に俺はこんなにもレオンを不安にさせていたのか…)
レオンの、ここまで本心を見せた表情が初めてで、申し訳なさと同時にとても愛しくなった。
こんなにも愛されてるんだなぁと、エレフは改めて実感した。そんな風に思えるのは、自分もそれなりに酔っているのだろうと思いつつも、心地好さが止められない。
カタ、と音を立てエレフは立ち上がり、向かい合うレオンの元に近付き包み込むよう頭を抱き締める。胸の辺りが人の…レオンの暖かさで、いっぱいになった。
(嗚呼、こんなに愛しいんだよ、レオン。)
「エレフ…?」
「レオン、好きだ。俺も愛してる」
エレフからの告白は初めてで、かなりの羞恥は感じている。けれどアルコールの力でかなりスルリと発することが出来た。
レオンの背中を撫でながらエレフは続けた。
「不安にさせてごめん、恥ずかしかったから、言えなかった…」
「エレフ、……嬉しいよ」
レオンが抱き締め返してくる。腰の辺りをきゅう、としがみつく様はまるで子供のようでエレフはなんだか不思議な気分になる。だけれど密着する緩い温度が気持ちいい。さらりと、少し癖のあるレオンの茶の髪を撫でた。
そうして数分だろうか、暫くするとレオンが動いていないことにエレフは気がついた。
腹辺りにある体もズッシリと重い。それに規則的な呼吸音。
「レオン……もしかして、寝た?」
「………」
答えが、ない。どうやら本当に寝てしまったようだ。
相当酔っていたし、エレフからの告白を聞き安心して眠ってしまったのだろう。余裕があるふりをして相当悩んでいたのかもしれない。それがレオンの悪い癖だとエレフは気付けた。
(それにしても、素を見せるレオンは何だか可愛いな)
レオンの背中をポンポン叩きながらエレフはそう思った。自然と頬が緩む。
「起きたら、どんな顔すんだろ」
記憶があるタイプか否かわからないが、そう呟きながら、起こさないようにレオンを横に抱えてベッドに運んだ。
終。
色んなレオエレサイトさん回ってると、酒に強い+余裕があるレオンが多いので、敢えて強くもなく余裕が無いところをみせるレオン様にしてみました。
ハッキリ言ってエレフよりも受けくさくなりました。あれ、おかしいな(^ω^)
この後のレオンの反応は皆様のご想像にお任せします。個人的には少し慌てても可愛いかと(ぁ
因みに姫抱きで運ぶエレフが男前過ぎて\エレフ△ー!/←レオエレ派です