僕と君の唇確認



※何かずっとキスしてるだけのような甘い感じ










くちゅり、と舌を絡められる。
歯茎を舐められ、ほぼ無理矢理と言っていい程歯列を割られ咥内に舌が侵入したのはつい先程。そのまま奥に潜んだ、情けなくも震えている俺の舌を器用に絡め取り今や弄んでいた。

「は、…っ」

ざり、とした感覚は中々慣れなかった。身体の奥から沸き上がる得体の知れない熱に息を吐き出すしかない。
咥内は彼の舌と煙草の味に占領されて、脳内がくらくらする。

ああ、駄目だ、気持ち良い。

息を吐いたその拍子に少しだけ唇が離れる。が、角度を変えられ、再び深く重ねられた。
ずるりと、舌の奥を擦られると身体が跳ねた。それはもう大袈裟な程。何だよこの男、経験無いくせに何でこんなにキスが上手いんだよ。静ちゃんのくせに!静ちゃんの馬鹿!童貞!
無遠慮に、それでいて繊細な動きで咥内を占領してくる舌に、抵抗することが出来なくなる。翻弄されるのなんて自分らしくないと思いながら、全ての神経が重なり合うそこに集中してしまう。
駄目だ考えろ折原臨也、俺はやれば出来る子負けるな臨也自分に甘えるな、と叱咤激励するが相手は池袋最強と言われる平和島静雄、単純な力比べで勝てる筈がない。
咥内は、未だ目の前の野性動物に荒らされる。

「は…、んん、っ」

ああもう、やだな。変な声ばっかり出る。恥ずかしいってか気持ち悪い。自分じゃないみたい。
唇を重ねてから五分ぐらい。その間何度か息継ぎに角度を変えたりしたが、最早息継ぎの役目を果たしているかもわからない行為に近かった。流石に苦しくなってきて至近距離にある胸をぐい、と押す。
途端、その行動が不愉快だったのか否か判らないけれど、今まで俺の後頭部に添えてあったようなものの彼の手が急に強引になる。その大きな手でぐっと寄せられ、重なり合いが深くなった。く、と苦しそうな呻きを洩らしてもお構い無し。
馬鹿だろこの単細胞、死ぬって。マジで。殺す気なの?なに?そう言う戦法?キスで窒息死とか新しすぎるんですけど!

「ん、ぐ、待っ……っんー…!」

「………」

「ん、は、ちょ…ほんと…っくるし…」

苦しすぎて口の端から溢れる唾液なんて気にしていられない。
胸を押す力が強まったからか、舌打ちが聴こえてきそうな程の不本意な様子で漸く唇を離した。
やっと吸える新鮮な空気に、はぁ、と大きく肩で息をする。それでもまだ彼の顔は至近距離に有り、先程まで貪っていた唇に触れるだけのキスを落とす。ちゅ、ちゅ、と何度も、挙げ句頬や鼻にも何度も唇を落としてきた。
擽ったい、それに恥ずかしい。静ちゃんってこんなんだっけと毎回思い、毎回キス魔だったことを再確認する。
喧嘩人形と称される彼からは想像もつかないけど、静ちゃんは接吻という行為が好きらしく、今でも似合わないなぁ想像も出来なかったなぁなんて思う。
それこそ、毎日毎回顔を合わせるたびに殺し合いをしていた…いや、している俺達が、まさかこんな風に唇を寄せ合っているとは誰も想像出来ないだろう。静ちゃんがキス魔だということと比べ物になら無い意外性だと思う。少なくとも俺はそう。俺だって、未だに信じられない。
信じられないけど、この事実を皆知ったらどう思うのか、個々の反応がどのような分かれ方をするのか。驚くか、軽蔑するか、どうでもいいか、やっぱり そうだと思ったと思う人物も居るかもしれない。それを想像だけでぞくぞくする。
これだから人間は面白い。十人十色とはよく言ったものだ、同じような思いでも少し違う。楽しいなぁ楽しいなぁ!これだから人間は飽きないよ!俺は人間を愛している!
でも今回は“試しに”バラしてみるということは出来ない。理由?理由なんて無いさ。けして恥ずかしいとかじゃないから、絶対。


「いざや…」

あ、そんな熱っぽく耳元で囁かないで欲しいなぁ。とんだ破壊力ボイスだと言うことにそろそろ気付いて欲しい。
前に本人に直接そう言ったことがあるけど、『手前の方がエロい』と打ち返されてしまった。そう言う問題じゃない、俺は、静ちゃんの声がヤバイんだ。
耳に優しくキスを落とし、そのナカを舐められる。吐息の中に微量ながら漏れる声。耳にダイレクトに届き、三半規管が揺れる。
耳朶を唇で食まれ、沸き上がる激情、弛緩する身体、相反する心と身体。ずくずくとした腰の奥の熱がとても甘美で不愉快だった。だって、それだけで何も考えられなくなる。
くらくらする、ああ、やっぱり静ちゃんは嫌いだ。俺をこんなにも翻弄する。こんなに火傷しそうな程沸騰するのなんて、他に沢山有るものじゃない。耳から伝わる刺激に思考が歪む。ついでに視界も歪む。

……視界?



「…臨也、泣くな」

「…っ、ぁ?」

気が付けば静ちゃんは耳への猛攻撃を止め、俺の頬を手のひらで多少乱暴に拭ってきた。いや、彼なりには十分優しいつもりなんだろうけど。
頬に残る生ぬるい、今は液体が冷えた感覚に己が涙していたことを把握した。瞼も濡れて冷たい。

「べ、別に嫌だったわけじゃ…」

「判ってる。ったく、相変わらず耳弱いんだな…耳攻めただけで泣くなんて感度良すぎだろ」

「……それを判ってて耳攻めとか確信犯かよ…静ちゃんのくせに」

それはどーも、といつもの切れっぷりはどこへやら、意地悪く唇が弧を描いた。なにそれ、直ぐに切れる静ちゃんらしくないその顔。不愉快だ、ああ全くもって不愉快だ!
同時に俺らしくもない。一応睨み付けても見たけど、きっと涙目で効果など無いだろう。寧ろ煽ってしまったかもしれない。
まずったな、と後で気付く辺り俺の余裕は何処かに失踪してるようで、きっと失踪先は静ちゃんに違いない。静ちゃんが俺の余裕を吸収してるんだ、絶対。

グイッと瞼に残る液体を拭おうとすると、寸出のところで腕を掴まれ止められてしまう。何、と言う前に瞼に唇が降ってきた。
このキス魔、舐める気満々である。
案の定ぬるりと瞼に舌が這い、ちゅ、と吸われる。もう片方も同じように。涙は確かに拭えたが、逆に濡れてしまったような気もしないでもない。まぁ静ちゃんがそんなこと気にするとは思えないけど。
唇が瞼を離れ、涙が伝った跡にキスを落とし、俺の野性の感的に言えばこのまままた唇に辿り着くなぁ、何て最早ぼんやり思う。
またあの拷問のような口付けが始まるのか、と思うが仕方ない、付き合ってやるか。

俺だって、この行為が嫌いな訳じゃないんだから。

そう思うのと同時に、再び唇が重なり合った。




(でも決して好きな訳じゃ無いから!)










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キス魔シズちゃんでした。ってか私がキス文(特に深いの)書くのが好きなだけなんですけど。

臨也は耳弱いといい なんか冬とかすぐ真っ赤になってそう
静雄は首かな…


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