ハンター試験開始 02
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(あ・・・さっきの・・・)
少年はスケボーに乗っている。
「おいガキ、汚ねーぞ。そりゃ反則じゃねーか、オイ!!」
「何で?」
「こりゃ持久力のテストなんだぞ」
「違うよ。試験官はついて来いって言っただけだもんね」
「ゴン!!てめ、どっちの味方だ!?・・・ってセルシアも頷いてやがる」
「怒鳴るな、体力を消耗するぞ。何よりまずうるさい。テストは原則として持ち込み自由なのだよ!」
クラピカの言葉にレオリオはぐっと押し黙る。
白髪の少年はじーっとゴンを見ていた。
「ねぇ君、年いくつ?」
「もうすぐ12歳!」
「・・・ふーん」
少年は考えた後、「やっぱオレも走ろっと」と言ってスケボーを降りた。
「オレ、キルア」
「オレはゴン!」
「そっちのおねーさんは?」
キルアが猫のような目をこちらに向ける。
「私はセルシア。・・・あの、キルアくん?」
「キルアでいいよ。何?」
「さっきトンパさんにジュースもらってたよね・・・飲んだの?」
「ああ、見てたんだ。オレは平気だよ、毒じゃ死なない」
「!そう・・・大丈夫なら、いいんだけど」
(毒じゃ死なない・・?特別な訓練でも受けてたのかな)
キルアが、今度はレオリオの方を見る。
「オッサンの名前は?」
「オッサ・・これでもお前らと同じ10代なんだぞオレはよ!!」
「「ウソォ!?」」
「あー!!ゴンまで・・・!!ひっでーもォ絶交な!!」
(あ、クラピカが離れて行く・・・)
マラソンが始まってから数時間が経過したころ、疲れきった受験生たちをさらに追い詰めるように、果てしなく長い階段が現れた。
(だいたい80kmは走ったよね・・・あとどれくらいかかるんだろう)
一度脱落しかけたレオリオは、上半身裸で汗みずくの状態ながらも走り続けていた。すごい根性だとセルシアは感心する。
「大丈夫?レオリオ」
「おう!!なりふりかまわなきゃ、まだまだいけることがわかったからな!セルシア!クラピカ!他人のふりするなら今のうちだぜ」
セルシアとクラピカは顔を見合わせ、同時にふっと笑った。
「少しはヤツを見習うか」
クラピカは上着を脱いで走り出す。
(レオリオがこんなにしてまでハンターになりたい理由って、本当にお金のためなのかな・・?)
セルシアはどうしても納得できなかった。
その疑問は、クラピカも感じていたものだったらしい。クラピカはレオリオを問いただし、緋の目のことを話した。
そして、仲間の目を取り戻すために誇りのないお抱えハンターになるつもりであることも。
(闇市場の顧客や金持ちと契約するハンター・・・)
セルシアもいずれはそういった道に進もうと考えていた・・弟を助けるために。クラピカとレオリオにそのことを話した。
「・・悪いな。オレにはお前らの志望動機に応えられるような立派な理由はねーよ。オレの目的はやっぱり金さ」
この世の全ては金で買える。人の命も金次第。レオリオの言葉にクラピカが怒鳴る。
「許さんぞレオリオ!!撤回しろ!!」
「なぜだ!?事実だぜ!金がありゃオレの友達は死ななかった!!」
「!!」
レオリオが舌打ちする。
「…病気か?」
「・・決して治らない病気じゃなかった、問題は法外な手術代さ!オレは単純だからな、医者になろうと思ったぜ。
ダチと同じ病気の子供を治して“金なんかいらねェ”ってそのコの親に言ってやるのがオレの夢だった」
「笑い話だぜ!!そんな医者になるためにはさらに見たこともねェ大金がいるそうだ!!」
レオリオは「わかったか!?金金金だ!!」と叫びながら走り続けた。
「レオリオ・・」
レオリオもクラピカも・・そしてゴンも、それぞれの思いを胸にハンターを目指している。
(私も頑張ろう・・今度こそ、テンダを助けられるように…)
もっと、強くなるために
セルシアは胸の内で新たな決意を固めながら、額の汗をぬぐった。