Ocean blue | ナノ
罠 03
(11/99)


3回戦は、そのままクラピカの勝利で終わる・・はずだった。

しかし、相手側はマジタニがまだ「負け」を宣言していないし、死んでもいないため試合は終わっていないと主張。
それに対しクラピカは、気絶したマジタニが目覚めるまで何もする気はないと言った。

「あの時、すでに戦意を失っていた相手を私は殴ってしまった。これ以上敗者にムチ打つようなマネはごめんだ」

レオリオとキルアが説得しようとしたが、クラピカは意見を変えるつもりはないと断言する。
そこでレオリオが多数決で決めようと皆に挙手を促すが、誰も手を挙げなかった。
本人の意思が変わらないのなら無意味な行為だからだ。レオリオはスネてしまった。

(なんだか、多数決の罠にどんどんはまっているみたい…)


それから数時間が経過しても、マジタニは目覚めなかった。
レオリオが本当に生きているのか確認したいと言うと、相手は“賭け”の勝負を持ちかける。

「彼が生きているか死んでいるか、賭けをしましょう。『時間』がチップがわりで使える時間は50時間ずつ。
どちらかの時間がゼロになるまで、賭けの問題を交互に出題すること。もしそっちの時間がゼロになったらタワー脱出のリミットが50時間短くなり、もしこっちの時間がゼロになったらあたしの懲役が50年長くなる。この勝負を受けるなら彼の生死を確認させてあげるわよ」

レオリオは勝負を受けた。そしてその最中、マジタニがずっと狸寝入りして時間を稼いでいたことを見破り、マジタニが負けを宣言。

3回戦でのクラピカの勝利が確定した。

そこまでは良かったのだが、相手――レルートが『自分は女か男か』を問題にし、レオリオは男に賭けた。
はずれた場合、レルートが本当に女かどうか身体を触って確かめられるからである。
レルートは女だった。

(レオリオ・・・・)

そして最後のジャンケン勝負でも負けてしまい、4回戦はレオリオの負け。これで2対2になってしまった。
しかも負けた分のチップ、50時間を支払わなければならない。

「〜〜〜すまねェ!!」

「・・・・・」

((セルシアの視線が冷たい…!))


「んじゃ、最後はオレだね」

キルアがそう言って前に出た。
相手の方は、腕と手の筋肉が異常に強そうな男だ。

「!!!」

すると、その男を見たレオリオが顔色を変える。

「キルア・・・・オレ達の負けでいい。あいつとは戦うな!!」

解体屋ジョネス。146人もの人間を素手で分解して殺した、ザバン市犯罪史上最悪の大量殺人犯である。

「あんな異常殺人鬼の相手をすることはねぇ。試験は今年だけじゃないからな」

しかし、キルアは軽く手を挙げてレオリオを制すと、闘技場へと進み出た。

「キルア!?」


「勝負の方法は?」

「勝負?勘違いするな」

ジョネスが顔を歪めて笑う。

「これから行われるのは一方的な惨殺さ。お前はただ泣き叫んでいればいい」

「うん。じゃあ死んだ方が負けでいいね」

「ああ、いいだろう。お前が」

一瞬の出来事だった。

すばやく移動したキルアの手に、脈打つ心臓が乗っている。

(!!??)

ジョネスは、自分の胸から染み出す血を見て、それが自分の心臓であることに気づいた。

「か・・返・・」

ジョネスが手を伸ばす。
キルアはその様子に残酷な笑みを浮かべ、心臓を握りつぶした。

「「「!!!」」」

「さて、3勝2敗。これでここはもうパスだろ?」

みんなが呆然とする中、キルアは死刑囚たちに向かって訊く。

「・・・ああ、君達の勝ちだ。ここを通り過ぎると小さな部屋がある。そこで負け分のチップ50時間を過ごしていただこう」

「あいつ・・一体何者なんだ」

驚いているレオリオ、クラピカ、そしてセルシアにゴンが説明する。
キルアは暗殺一家のエリートなのである。

(もしかして・・飛行船で「両親が殺人鬼」って言ってたのは、このこと?)

「さ、行こーぜ」

キルアが闘技場から戻って来た。とにかく、セルシア達6人はようやく先に進むことができるのだった。


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