罠 03
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3回戦は、そのままクラピカの勝利で終わる・・はずだった。
しかし、相手側はマジタニがまだ「負け」を宣言していないし、死んでもいないため試合は終わっていないと主張。
それに対しクラピカは、気絶したマジタニが目覚めるまで何もする気はないと言った。
「あの時、すでに戦意を失っていた相手を私は殴ってしまった。これ以上敗者にムチ打つようなマネはごめんだ」
レオリオとキルアが説得しようとしたが、クラピカは意見を変えるつもりはないと断言する。
そこでレオリオが多数決で決めようと皆に挙手を促すが、誰も手を挙げなかった。
本人の意思が変わらないのなら無意味な行為だからだ。レオリオはスネてしまった。
(なんだか、多数決の罠にどんどんはまっているみたい…)
それから数時間が経過しても、マジタニは目覚めなかった。
レオリオが本当に生きているのか確認したいと言うと、相手は“賭け”の勝負を持ちかける。
「彼が生きているか死んでいるか、賭けをしましょう。『時間』がチップがわりで使える時間は50時間ずつ。
どちらかの時間がゼロになるまで、賭けの問題を交互に出題すること。もしそっちの時間がゼロになったらタワー脱出のリミットが50時間短くなり、もしこっちの時間がゼロになったらあたしの懲役が50年長くなる。この勝負を受けるなら彼の生死を確認させてあげるわよ」
レオリオは勝負を受けた。そしてその最中、マジタニがずっと狸寝入りして時間を稼いでいたことを見破り、マジタニが負けを宣言。
3回戦でのクラピカの勝利が確定した。
そこまでは良かったのだが、相手――レルートが『自分は女か男か』を問題にし、レオリオは男に賭けた。
はずれた場合、レルートが本当に女かどうか身体を触って確かめられるからである。
レルートは女だった。
(レオリオ・・・・)
そして最後のジャンケン勝負でも負けてしまい、4回戦はレオリオの負け。これで2対2になってしまった。
しかも負けた分のチップ、50時間を支払わなければならない。
「〜〜〜すまねェ!!」
「・・・・・」
((セルシアの視線が冷たい…!))
「んじゃ、最後はオレだね」
キルアがそう言って前に出た。
相手の方は、腕と手の筋肉が異常に強そうな男だ。
「!!!」
すると、その男を見たレオリオが顔色を変える。
「キルア・・・・オレ達の負けでいい。あいつとは戦うな!!」
解体屋ジョネス。146人もの人間を素手で分解して殺した、ザバン市犯罪史上最悪の大量殺人犯である。
「あんな異常殺人鬼の相手をすることはねぇ。試験は今年だけじゃないからな」
しかし、キルアは軽く手を挙げてレオリオを制すと、闘技場へと進み出た。
「キルア!?」
「勝負の方法は?」
「勝負?勘違いするな」
ジョネスが顔を歪めて笑う。
「これから行われるのは一方的な惨殺さ。お前はただ泣き叫んでいればいい」
「うん。じゃあ死んだ方が負けでいいね」
「ああ、いいだろう。お前が」
一瞬の出来事だった。
すばやく移動したキルアの手に、脈打つ心臓が乗っている。
(!!??)
ジョネスは、自分の胸から染み出す血を見て、それが自分の心臓であることに気づいた。
「か・・返・・」
ジョネスが手を伸ばす。
キルアはその様子に残酷な笑みを浮かべ、心臓を握りつぶした。
「「「!!!」」」
「さて、3勝2敗。これでここはもうパスだろ?」
みんなが呆然とする中、キルアは死刑囚たちに向かって訊く。
「・・・ああ、君達の勝ちだ。ここを通り過ぎると小さな部屋がある。そこで負け分のチップ50時間を過ごしていただこう」
「あいつ・・一体何者なんだ」
驚いているレオリオ、クラピカ、そしてセルシアにゴンが説明する。
キルアは暗殺一家のエリートなのである。
(もしかして・・飛行船で「両親が殺人鬼」って言ってたのは、このこと?)
「さ、行こーぜ」
キルアが闘技場から戻って来た。とにかく、セルシア達6人はようやく先に進むことができるのだった。