Ocean blue | ナノ
罠 01
(9/99)


翌日、予定時刻よりだいぶ遅れたものの、飛行船は無事目的地に到着した。

「ここはトリックタワーと呼ばれる塔のてっぺんです。ここが三次試験のスタート地点になります」

試験内容は塔の下まで生きて降りてくること。制限時間は72時間。

(一見何もない石床だけど、きっとどこかに下に通じる入口があるんだろうな)

しばらくして、ゴンとキルアが6つの密集した隠し扉を見つけた。

「扉は1人に1つずつ、みんなバラバラの道を行かなきゃならないんだね」

「そういうこと」

ジャンケンで扉を選ぶ順番を決め、それぞれの扉のわきに立つ。

「決まったな。1・2の3で全員行こうぜ。ここでいったんお別れだ」

「地上でまた会おうぜ」

「ああ」

「1・・・2の・・・3!!」


ドサッ

「!?」

扉をくぐったゴン、キルア、クラピカ、レオリオは再び顔を見合わせる。全員同じ部屋に落ちていたのだ。
スピーカーから聞こえる声の説明によると、『多数決の道』というルートらしい。この部屋からは5人の人間がそろわないと出られないという。

「セルシアがいないね」

ゴンが部屋を見回して心配そうに言った。

「セルシアが選んだ扉は、おそらく別の部屋に通じる扉だったのだろう」

クラピカも若干不安そうな顔をしている。

「あいつなら大丈夫だろ。まあまあ強いみたいだし。(詳しく知らないけど)」

「セルシアもこの部屋に来てくれりゃー良かったのにな。オレ達はあと1人誰かが来るまで待たなきゃならねぇのか・・・」


**********

「!?」

一方、セルシアは1人で明るい部屋の中に降り立っていた。

「『罠(トラップ)の道』…?」

壁に書かれている文字を読み上げ、部屋の出口へ進むと自動的に扉が開いた。
通路は薄暗くてよく見えないが、ゆるやかな下り坂になっているようだ。

(とにかく、進もう・・・)


それから2時間、セルシアは休む暇もないくらい様々な罠に襲われ続けた。

(槍が降ったり、天井に押しつぶされそうになったり、珍獣が出てきたり…なんなのこの道は…)

それらをかろうじて回避してきたセルシアはぐったりと疲れていた。

(しかも逃げてる途中で小部屋に入ったら、エレベーターみたいに上へ運ばれちゃったし)

せっかく下へ降りて来ていたのに、ふり出しに戻ってしまったようだ。

カチッ

「え」

足もとで音がした。セルシアは一気に緊張してその場を離れ、あたりを警戒する。
けれど、いくら待っても罠が作動する気配はない。

(…何も、起こらない?)

疲れていたせいで、トラップを踏んだように錯覚しただけだったのかもしれない。そう考え、再び歩き出した。

ドッ

「!!!」

いきなり横の壁に丸い穴があき、そこから水が噴き出してきた。
水流の勢いは強く、真横にいたセルシアは反対側の壁に叩きつけられる。

(痛っ・・・)

とっさに頭をかばったものの、肩をしたたかに打ちつけて顔を歪めた。
直接水が当たらない所に逃れ、状況を確認する。水は今も出続けていた。

(!通路が塞がってる!?)

さっきまでは何もなかった通路の前後に、鉄の壁が出現していた。隙間はどこにも見当たらない。
壁で囲まれた空間に、大量の水が溜まってきている。

(このままだと溺れる…!)

セルシアはひざくらいまで溜まった水の中を歩き回り、壁を手探りで調べながら必死に出口を探した。
これまでのトラップのように、なにか仕掛けがあると踏んだのだ。しかし、どこを探しても解決する手段は見つからない。
冷たい水が、セルシアの体温とともに思考力をも奪っていく。

(どうしよう…どうすれば脱出できる?)

とうとう水が首の高さまで溜まってきた。セルシアは朦朧とした意識の中、声を聞いた気がした。

(・・・クラピカ?)

冷静な彼の声を思い出した瞬間、セルシアははっと気がつく。

(横の壁・・通路を塞いでいる鉄壁とは違ってレンガ――石でできてる。壊せるかもしれない、能力を使えば)

幸い、ここにはたくさんの水がある。セルシアの能力・・・それは、水を生み出す力と、水を操る力だった。

(できれば使いたくなかったけど…今はそんなこと言ってられない!源になる水がこれだけあれば、そんなに消耗しないはず・・)

セルシアは壁のある一点に集中して水圧をかける。それと同時に全身の力を振り絞り、杖で突いた。

ドガッ

一撃で分厚い壁に穴があき、そこから溢れ出ようとする水の力のおかげで穴はさらに広がっていく。

セルシアは流れ出す大量の水と一緒に壁の向こう側へと押し出されていった。


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