語り部:星




はい。これでいいかな?
あはは、全然迷惑じゃなかったよ。ほら、俺って帰宅部じゃん?なかなかできない体験をさせてもらったから、むしろ感謝してるよ
……あの、さ。怪我大丈夫?その爪で引っかかれたような……
……彼女とケンカしたって……リア充はいいね。絆創膏あげるよ。後でちゃんと消毒しなよ?

……うん。大切な友達だから
え?俺の怖い話はないのかって?うーん……怖い話なのかわかんないけど、一つだけなら話せるよ
は、速いね、書く準備。さすが新聞部。それじゃあ話させてもらおうかな?

世の中には『視える』人がいる
霊感とかがあって、幽霊が視えたりするって人たちだよね。俺はそんなに詳しくないから、よくわかんないけど、さ
そういう人って、大変だと思うんだ
だって幽霊が視えるんだよ?普通なら怖くない?しかも、幽霊ってのは怖いと思うと寄ってくるし……大変だよね

そんな視える人たちの中には、ね
邪魔だからと未練がある幽霊を全てを消した奴もいる。きっと何か、簡単なことが未練だったのかもしれない。でもそんなこと知らないと言わんばかりに消した
面白いからそこにいさせるって奴もいる。助けてと言ってるのかもしれない。でも何かするわけでもない、何もしてやらないでその様を見ているだけ
そんな人たちがいる

ある青年は、幽霊が心底嫌いだった
怖くはないけど嫌いだった。何もしていないのに勝手に近づいてきて、恨んでくるそいつらが
だから青年はいつも関わらなかった。視えないふりをした
例え誰かが幽霊に憑り殺されそうになっても
青年は見捨てる

ほら
もしかしたらあそこの先生は道端で轢かれた猫に同情したせいでその猫に憑き纏われているかもしれない
もしかしたらあそこの男子生徒は心霊スポットを回ったせいでそこにいた幽霊たちを連れて来たかもしれない
もしかしたら――




―――君の彼女は憎悪で君に生霊を憑りつかせてるかもしれない。……肩に掴まってる、ね
それでも青年は、視えないふりをするんだ。関わりたくないから

……どう?怖かった?彼女さんとはちゃんと話し合うんだよ?
……怖がってくれたなら良かった。これは怖い話だからね
え、よくケンカ別れしたってわかったって?だって君、怪我してたじゃないか。ケンカ別れはわからないけど、なんとなく察せるよ

それじゃあ俺は買い物があるから、じゃあね
うん?俺が好きなもの?お礼に?……うーん、特にない、かな?欲しい物が出来たら言うよ
また明日ー




背を向けて少し離れてから笑みを消す
まだ背中に感じる視線を無視して。少し関わりすぎたかもしれない。これだから『視える』のは嫌なんだ
それにしても……あそこまで強そうなのは久しぶりに視たな
さっきまで話していた部員の肩を思い出す。黒いあの女性はきっと、フった彼の事が許せないしフラれた理由である人物が憎いのだろう
その人物が俺なんて……あーイヤだイヤだ

俺は視えないふりをする
だって、自分の身が一番大切だから





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