語り部:キカイ



珍しいですね。星さんが部活動とは。
どうせあなたのことですからいい顔して手伝うと言ったのでしょう。星さんらしいですね
……で?私を呼び出した理由は?
……新聞部が今度出す内容が怪談、ですか?
まもなく季節は秋になると言いますのに、なぜ今更。呆れて物も言えません。
ですがまぁ、星さんに借りを作っておくというのは悪くありません。手伝ってあげますよ。

ですが怖い話……いえ、あるのにはあるのですが、どう恐怖に仕立て上げようと思いまして。
する必要はない?そのまま話せ、とは……横暴もいいところだと思いますがね。いいでしょう。
私の小さい時の話、星さんたちに会う前の話です。今も当然人と関わることなど少ないに等しいですが、影さんと星さんに会う前は輪にかけて人との関わりを嫌いました。というより、母が心配でしたので。
そんな私ですので、蔵で調べもの……あの頃は冒険というものでしょうか。家より離れたところにある蔵の中にはいろいろありますので、私の退屈凌ぎになってくれていました

ある日、不思議な箱を見つけたのです。形は……正方形だったか珍しい形であったかは忘れましたが、中入っていたのは蛇でした
その蛇はどうも衰弱していってるようで、生きてる感じはするのですが身動き一つしない。私は動物に好き嫌い等の感情は特にございませんので平気でしたよ?なので蛇に驚きはしませんでした。ただ、見つけてしまったという点では見過ごすということもできたのですが、幼いころの私はそれなりにイイ子だったのでしょうね。
水と餌……なんでしたかね?食べれそうなものを蛇の元に置いたのです。もちろん餌は生きてるのですよ。蛇は肉食と知っていましたから。衰弱してるのにいきなり餌というのも微妙ですが

それでしばらくは様子を見ていました。すると蛇がゆっくりと、鈍い動きで餌を食べました。それはもう勢いよく。何故か安心して私は次の餌を持ってきましたよ。なぜでしょうね。食べる勢いからまだお腹がすいているとでも思ったのでしょうか?
蛇は箱に入れっぱなしでまた餌を与えましたね
その日から私は蛇を看病……あれは育てるに入るでしょうか?何もすることがなければ蛇の様子を見に言ってましたよ。名前は付けませんでしたが、大人しい蛇だったようで試しに手を出せば顔を擦り付けてきてゆるゆると巻き付いてきて……何気持ち悪がってるんですか。女子ですか。あなたのほうがキモイです

妙に懐かれましたので、私も悪い気がしなかったのでしょうね
すごく大食いだったので餌は大目に箱の中入れてあげて時たま水を、という感じで育ていました
蛇に懐かれ数日経ち、私は何を思ったのかその蛇を箱ごと連れて散歩にでました。私、人と関わるのを嫌っていたと言いましたよね?その理由の一つはその時から子供のちんけないじめ……いたずらですかね?されていたのですよ
ですので私が外にでて公園に行けば、わざわざ離れていたというのに近寄ってくるバカが多く……正直殺意はありました。やってませんよ?手を出してきたのは態度も図体もデカい脳みそなさそうな男子です
いつも通り私に何か言ってきて、なんでしたっけ?……そうそう、箱の中を見てきたのですよ。箱の中には当然蛇がいるじゃないですか。その男子は気持ち悪いって言って私から箱を奪い、遠くに投げ捨てたのです
私は急いで探しましたよ。だって蛇はわかりませんが、箱は私の家の蔵にあったもの。無くしたなんて、とてもじゃありませんが知られたくありません
で、結果を言いますと……箱は見つかったのですが蛇は見つかりませんでした。思いっきり投げ出されたので驚い逃げ出してしまったのですね

私は蛇は探しませんでした。元気でしたし、あのままでも大丈夫だとわかっていました
なぜ?……懐かれていても特に愛着はありませんでしたし、それにその蛇は自分より大きいカエルも虫も餌として食べると知っていましたので
それでもやはりイイ子だって私は「ごめんなさい」と何故か謝って帰りました。何故かは今の私でもわかりませんよ。蛇に対してか、自分に対してか、誰に対してか。口から落ちただけかもしれません
言いたいことは、その後ですよ。

箱を投げた男子は私の家より少し遠いところに住んでいたらしく、話を聞いたのは少したってからのことなんですけどね?
その男子、死んだそうです
死因は聞いていませんでしたが、なんでもひどく苦しんで死んだとか
そしてその男子の親の詳細もなく、いつの間にか家は空き家になったそうです
それによって私が気味悪がられたのはどうでもいい話ですが、怖いでしょう?私に関わったら死ぬ、なんて
はい?蛇?結局戻っては来ませんでしたよ。そのまま自然界で弱肉強食を生き抜けてたらいいですね
私の話はこれで終わりです。どうですか?怖かったでしょう?なんせ原因は私になってるのですから




皮肉に笑って用事があったからと帰っていったキカイ。俺は少しの間気持ち悪くて仕方がなかった
キカイが怖いで終わるなら蛇のところなんて端折ればいい。なのにあいつは蛇の話を持ってきやがった
蛇は箱の中に入っていた。キカイはその蛇にと大量の生きたままの餌を箱の中に入れていた。蛇はそれを全部食べていた
多分、男の子は……
そこまで考えてやめておく。余計な詮索はいいことがない。触らぬ神に祟りなし、だと……視界の端に見えた尻尾にそう思った





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