視界の端から中心にかけて鮮明になっている
ぼやけたところがある視界にこれは夢だとわかる
ただ、夢とわかっても嫌な状況だった

私の目線は随分下がっていて、手には短めの刀……けれどこの手にはちょうどいい長さの短刀を握っている
座っていて、前を見据える。私の目の前には、動物の死骸があった

それは多分、狼とヘビだと思う
どちらも動かないし、赤く染まってる
もうこれは生きていないって、決めるのは簡単だ

思わず後ろにずれると、背中に何か当たった
固まるけど、それが温かくて、自分ぐらいの背中だとわかると力が抜ける
なんでか安心した。この人は大丈夫だと

背中合わせに、密かな体温で相手がわかる
目の前のに恐怖が募るのに、温かさに安心しては消えていく
なんでだろ。後ろにいるのが今の私ぐらいの少年で、彼が私の傍にいるのは当然だと思うのは





「―――お……きろ……おい……おい…勝手にココア飲むぞ」
「……うん……おはようございます……」

いつの間にか居眠りしていたみたいで、目を開けたら海が目の前にいた
別にそれいい。なんだか夢見悪かったし。だけど、だけどなぁ……

なんでお前は上半身裸なんだよ!!
いい加減追報するぞ!!そうしたら私もヤバいんだけど!!

「頼むからちゃんと服着てくれ!!露出狂!!」
「お前女々しいんだよ。たかが上半身ぐらい……まさか、お前……どうて「私は女だ!!喧嘩なら買うぞゴラァ!!」めんどくさいからいいわぁ」

濡れてる上半身と髪を拭きながら離れていく海に風呂を使ったのだと知る
いつ寝たんだ……?記憶を遡っても思い出せない。まぁ、いっか

服を着て髪をそのままにしようとして海にイラつきながらドライヤーを出す
それを目聡く見つけた海は当然嫌そうに顔を顰める

「いらねーって」
「風邪ひくだろ」
「いいって」
「お前人様の家に上がってきて今さらいいもねーよ。やってやるから座れ」
「……自分でやる」

渋々ドライヤーを受け取った海に納得のような安心のような気持ちになる
さて、後は風呂……風呂かぁ……お湯が勿体ない……
風呂を洗うか今日は我慢して入るか迷う。けど……あいつと同じ風呂の水に入るとか……いや、あんまり抵抗もないけど……

「なぁ、お前うなされてたぞ」
「あー、なんか覚えてる。悪夢だったわ」
「……どんな夢だ?」

どんな夢?
夢なんてすぐ忘れるもんだけど、妙に印象深いのは忘れないらしい
なので記憶を探ってみる。寝る前の事は思い出せなくても夢は少しだけでも思い出せた

「なんか、動物虐待してた。短刀持ってて……誰かと一緒にいたな。気色悪かったよ」
「……動物は、狼とヘビか?」
「うーん?……そうだな。その二匹だった」
「……そうか。ドライヤーあんがと」
「おう」

なんで海は夢で動物が狼とヘビだとわかったんだろ?
……多分、それは海の例え話からだと思うけど

ドライヤーを片付けて、時計を見るともうすぐ夕方
夕食の準備しなくちゃ

立ち上がり、台所の方に向かう
あ、そうだ。聞かないと

「お前今日食べんの?」
「食ってく。上手く作れよ」
「文句は受け付けん」

お米間に合うかなー




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