眠い。今日で徹夜何日目だ?
隈が酷い目元を鏡で確認してコーヒーを飲む。朝が来るまで、まだ少し時間がありそうだ
ここはイタリアにある、裏社会に属している組織

手が汚れる任務は当然で、だがその分入ってくるお金は素晴らしい
汚れれば汚れるほど、手に入る量は多い

別に任務という仕事はそれだけではない
事務的な役割だってある。情報収集に書類整理。策を練る作業だってある
俺は専ら、そっちを任される

「わー、ナツの部屋が書類で埋め尽くされてる」
「崩すな。それと私はナツではなくナツメだ」

わかってるのかわかっていないのか、「はーい」と気の抜けた返事が返ってきた
ここでの私の呼び方はナツメだが本名も『なつめ』というのはここのボス以外誰も知らない
実際、裏社会で本名を使うのもどうかと思うが、この組織に入る時に考えるのが面倒でそのままカタカナにした

ここに入ってから、追われるように仕事仕事仕事。表社会で働いた以上の仕事の量によって、自分のことは何一つ手が付けられない
おかげで髪は伸び、少しばかり痩せ、私という一人称使うようになってからは組織の仲間に『女みたいだ』とバカにされた
勿論そういった奴は半殺しにしたが。事務仕事をしているからといって非力なわけではない

カップを机に置き、声をかけてきた奴を見る
自分の室内でもないのにソファーに寝転び何かしているのは組織の一人の牙狼
男のような名前だが、実際は女。なんでそんな名前なのか。付けたのはこいつの親ではなく、別の人間が意図的につけた
だから、女なのに男みたいな名前をしている

「なーなー、ナツはこれ以外することないのか?」
「以外?」
「女あさ「言葉を慎めマセガキ」えー」

ついでに言うと知識が乏しく品性には欠ける
こいつの保護者は何してるんだ……
思わずため息が出た。何故かこいつはよく私の部屋に来るが、私を疲れさせるだけで正直早く帰って欲しい

面倒な問題児に頭を抱えていると人の足音が聞こえてきた
それは迷いなく私の部屋に向かっている。どうやらやっと来たようだ

「牙狼!!やっぱりここか!」
「あ、せんんんんんっ!!!」
「お前は、あれほど、仕事の邪魔するなとっ」
「痛い痛い痛い!!頭グリグリしないでくれよ〜!!」

書類の山と山の間からしか見えないが、母親が子供に怒るようなことをしているらしい
喧噪をBGMにまた一口コーヒーを飲む

数分経って、やっと静かになった
見ると狼牙は騒ぎ疲れたのかぐったりしている。それの後襟をつかんでいる狼牙の保護者、千を見る

「ナツメさんすみません。こいつがまた……」
「気にしていない。早く行ってくれ」

すまなさそうに一礼し、出ていく牙狼と千。狼牙は引きずられてるのに苦しくないのか?
とりあえず、面倒なのが二人いなくなったのでまた書類整理を再開した








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