心残りはありますか? | ナノ


どれぐらいの高さから落とされたか
そんな明確なことはわからない
痛みもなく気が付いたら白い天井が見えていた

何処かもわからず、このままここにいようかなと思っていると視界の端に影がかかった
そっちに目を移せば黒髪の……多分女性
自分と同じで着ている物が男子制服ってやつだから確かめられないけど

「……」
「……君、起き上がったりしないの?」

起き……起き上がったほうがいいのかな?
よくわかんないけどとりあえず上半身を起こす。その時指先に何かが当たり、見るとあのヘッドフォンがあった

これも一緒に落ちたんだ……
ヘッドフォンを見て、傷がないことを確認する
……ないから、いいや

「それが君の魂の欠片が具現化した物?」
「魂の欠片……具現化?」
「僕も詳しく知らないし説明するのが面倒だから後で神々に訊けばいいよ」
「神々?」

意味がわからず訊くと相手はため息をついた
何かいけなかっただろうか?わからないから特に反応もしない

「説明しないでこれを開催したわけね……」
「……」

ブツブツ呟いてる人から意識を移して立ち上がる
ヘッドフォンは少し邪魔だから首にかけた。……重いのか軽いのかもよくわからない
まだ呟いてる……折角立ったのだから歩こう

呟いてる人とは反対の方に歩いていく
音がほとんど聞こえなくて現実味がない。白い壁や天井、冷たいような温かいような空気、それらもその現実味の無さを助長しているのかもしれない

「や、止めてください!!」

……なんだろ
声の方は薄暗くて、よく見なければ誰かいるのかというのも見逃してしまう場所

そこを覗くように見れば、一人の……女と数人の男
何をしているか。聞こうとも思えなかったけどもただじっと見てた
自分に気付いていないのか、そいつらは気づかない

「なぁ頼むよ。俺たちだって困ってるんだ」
「い、嫌です!これは私ので……持って行かれるなんて……」
「もういい加減それを寄越せ!!でないと……!!」

修羅場ってやつだった
これは……どうしたらいいんだろ。どうしようもないか
来た道を戻って違う道に行こうとした

『…………タスケテ』
「!」

雑音のような音に混じって
声が聞こえた

それは近く、耳元でした
けれど自分の耳元といえばヘッドフォンだけ
……まさか……。なんとなくヘッドフォンの片方を耳に当てる

『タスケテ……』

それは女性の声。けど大人というより幼くて
そうだ、ちょうど後ろから聞こえた人の声に似てる

振り返ると女……女子生徒と目が合った
またタスケテと声がする
このヘッドフォン……よくわかんないことばかり

ため息を付いて、足を進めた
どっちに?そんなのは……決まってたのかな?

「あ?なんだよおま――」
「消えろ」
「――アガッ!?」

男を一人、殴って静かにさせる
これでうるさい音が一つ減った。やっぱり音は静かなのがいい
残りも構わず殴っていく。一人一人、確実に一発で静かにしていく

「(でも、これより刃物の方が……刃物ほうが、なんだ?)」

この場に刃物があればと思った
なんでそう思ったのか、なんでそれが良いのかはまでは思い出せなかったけれど、刃物を手に入れればわかるかも

少ししてやっと静かになった
これでよし。振り返って女の方を見ると、女、女子生徒は体を震わせていた
……これは知っている。確か、これは怯えているってことだっけ?

「……怖い?」
「ひっ……」
「……怖いんだ……」

怯えて銀色の……楽器?を握りしめる女子生徒は怖がっている
助けてって言われたから助けたのに、怖がられた。……これは、知っていた気がする

ため息をついて女子生徒に背を向ける
さて……どこにいこっかな……

「……ま、待ってください!!」
「!!」
「あ、ありがとう、ございます……わ、私も、私も一緒に、行動させて、ください……」

急に手を握られて、止まって見るとその女子生徒がいた
目に水……涙を溜めていて、それで自分を見てくる

……本当にいいのかな?
そう思ったけど、別にいいや。多分、自分から手を振りほどくことなんてないから

「いいよ」

そう言ったときのその女子生徒の表情はあまり見たことのない表情だった



prev next


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -