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そういえば忘れていた
通り道で牙狼が少女を振り回していたことに。そしてちゃんと片していなかったことに
おかげで廊下の途中でよくわからない戦闘が起きていた

「私に攻撃してくるんだ……怖くないの?」
「そんなのどうでもいい。お前は牙狼に好かれた。好きだと言われた。忌々しい。牙狼に近づくな」
「あはは!お人形ちゃんが千に壊されちゃう!!がんばれお人形ちゃん!!可愛い可愛い赤のお人形ちゃん!!」

……狂気的な茶番だな
黙ったままやり過ごそうとしたが優が一歩も動かない
……?

不思議に思いに顔を覗けば、一人で百面相をしていた
本当になにをやっているんだ?
この間に千と少女がお互いの武器を構え走り出す。少女もここにいるだけであって素晴らしい身体能力で攻撃を繰り出す
千は真正面からの攻撃では不利と知ってからは相手の死角に入り隙を狙う。元々が暗殺者である千にとっては最善の戦略だ

牙狼は笑顔で少女を応援をしている
それどその目にはどちらも映っていない。牙狼にとってどちらがやられようと構わないというのがすぐわかった

「さて、どうするか……」
「本当にそうだよね」

ただの呟きに返されて言葉
驚き見ると、ボスと要、そして兄弟のような男二人がいた

「優、なんでお前……」
「ごめんね。話し合いの邪魔しちゃって。すぐ帰るから……」
「すぐ帰らなくてもいいよ。それより、これはどういう状況ですか?」
「こっちもわかんねーっての……何やってんだあいつら」

容姿は似てるけど性格は違う、と
裏のある顔で見てきた青年を冷静に分析していると、何かの気配を感じたので少しだけ後ろに下がる
目の前を過ぎて壁に刺さったのは小型のナイフ
これは、千が使っているのか

そこまで考えてここが自分たちの拠点でないことを思い出す
つまり、刺さったのは商談相手の……

「ボス……」
「うん。そうだね。事情聴取するにもなんだか戦いがヒートアップしてきたみたいだし……クロウさん。後で交渉やり直ししますか?」
「ついでに修理費も請求してもいいかな?」
「ええ、これは俺たちに非があると思いますから……ね?ナツメ?……少しでも軽くするために――」
「今すぐ止めます」

ボスが言い終わる前に少女と千の間に入る
先に少女の日本刀をわざと左肩に受ける。結構深く斬られたのか激痛が駆け上がってくる
少しだけ顔をしかめ、刀身を握り、力を入れて少女をぶん投げる勢いで刀を肩から抜く

私に気づくのが遅れた千が投げた小型のナイフが迫ってくる。掴むタイミングは……ズレそうだ
右腕を盾にし、ナイフのほとんどを受ける。腕に刺さらなかったものは横っ腹のほうに刺さったが、最初から壁に刺さらないようにするのが目的なので気にはしない
といっても、止めることができない血が重力に従い落ちていくのが見えたのもあり意識はお金の清算に向いたのだが

「今月と来月のを少なめに……いや、先月節約した分をこの際……」
「な、ナツメ!!勘定なんてしなくていいから手当だよ!!ごめんなさい!!おれっち謝るから手当する!!」
「ナツメさん、すみません!!俺としたことがナツメさんに怪我を負わせるなんて……!!」


騒がしい周りよりお金のほうが気になる
いくらするだろうか。こんなところでこんな失敗なんてしたことはない。いや。過去の企業時にやらかしているかもしれない

段々と寒くなってきたが熱い傷にはちょうどいいと、また考え出す
すると、思いっきりナイフが一本抜かれた

「い……」
「ナツメ。救護室に行こう。さすがのナツメでも貧血を起こすよ?」

銀のナイフを片手に笑うボスに、意識を戻す
それと同時に痛みと眩暈もしてきた。さすがにボスの命令に逆らうことはできないな
大人しく従い、牙狼と千とあと二人についてきて、向かった


  


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