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灯りが消え、人々は自分の帰る場に戻りつつある
帰れる方法は知らないのに時間は止まらない。そのことに悲しみや焦り、不安、その他諸々の感情は混ざるが私はただ目を閉じる

もしも自分の国、正確には家に帰れなくなったらどうしようか。この国の常識は知らない。身なりも、何もかも、違う
それでも、私は慣れないといけない
異質だと疎まれても、異端だと罵られても、私は受け入れる

受け入れなきゃ、自分が壊れるから
拒絶して痛みを味わうなら
受ける入れて、慣れて、流されるままのほうが私はいい

そんな私とは反対の、自分の意思で拒絶していたあの黒髪の子が頭に浮かぶ
とても目を引く子。ある意味、人に好かれる子
人の気持ちを拒絶できるあなたは、私とは違い強い。流されず、自分を保つあなたに私は賞賛する

「高潔で、美しい心を持っているから」
「何がだ」

低く、唸るような声。反射的に目を開けたら間近に不機嫌な、でも心配といった顔があった
私の視界の中心で、あの暗く何も見えない闇のような瞳が私の目を見つめる

「……ツユ、ひかり?」
「どこをほっつき歩いているかと思えば、何故そなたは世界の狭間を越える」
「はざま?」
「……腹が減った。我の胃を満たせ」

なぜここにいるのか、私の手を引いて行くあてがあるのか、聞かなきゃいけないと思った
でも、不思議だ。私はなんの疑問も持たず、ツユヒカリに引かれるまま行く

本当に、何故だろう。ツユヒカリに彼女が重なった
拒絶ばかりでなく、受け入れもでき、流されることなく、己を保つ
手が届かない、高い居場所にあなたたちはいる



―――きっと、私とは相容れることなんかない存在
私はあなた達の存在に、自分も知らずに涙が流れたのでした



  


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