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「あら?……」

私はその日も薬草を探していた
早く帰んないとツユヒカリが待っている。食事のために帰ろうとしていた
なのに、随分と不思議の場所に出たものでして

鉄の塊が大きな音を鳴らして私の前を通り過ぎていく
赤、青、黄のおかしな光。点いたり消えたりしているのは調子が悪いのかしら?

うーん、ここは異国の町なのかしら?困った。ツユヒカリの食事を作る時間には間に合うでしょうか?
ツユヒカリは意外と短気なようで、私にイラついてしまうのではないだろうか
薬草の入っているカゴを眺めながらそんなことを考える

「ゆいちゃぁぁあああああん!!!大好きだよ!!!!!」

考え事すらも消えるほどの大きな声。甘くて胸焼けしてしまうようだけど、それがその人の声なのだと思い直す
どこから声がしたのか探していると、前から走ってくる黒髪の子が目に入った。後ろを見てて私に気付いていない。ああ、ぶつかるなぁ


――ドンッ


予想していた衝撃。でも受け入れられ切れなかったせいか、私は倒れた
衝撃ぐらい受け入れなきゃいけないのに失敗しちゃった
痛みに正直に顔を歪めながら上げれば、焦っていて、私に驚いてる黒髪の女の子がいた。どこも痛めてない……傷ついていない……うん、彼女は無事だ

「……大丈夫、デスカ?」

敬語慣れしてないのかしら?だったら無理に敬語を使わせちゃいけない
そう思って急いで立ち上がって彼女に言う

「敬語はいらないわ。あなたに傷ができなくてよかった」

いつもの薬草を持ち歩いてないから怪我をしても対処できないのよ。対処できなくては受け入れてないも当然。だから怪我をしなくて本当に安心
にっこり笑ったはずなのに何故か彼女の顔が引き攣った。町の人と同じ表情……ショックだけれども拒絶されちゃったら仕方ない。私が悪いのだ

「唯ちゃーーーーん!!!!」
「ゲッ」

新しく増えた一人に視線を向ける
金色に蒼い目……西洋の人かしら?それにしては東洋の言葉が上手
よくよく見れば服装が黒髪の子も西洋の子も一緒。これはこの町の習慣……だったら私、今傍から見れば不思議なのかも。うーん、仕方ない

「私の前から消え失せろこの〇〇〇〇〇!〇〇して〇〇〇にしてやる!!」
「やん!唯ちゃん過激!」

……〇〇〇〇〇ってどういう意味でしょう?もしかして異国の言葉?こんな時に学がないのはちょっと残念。でもできないかったし、いいかな
そんなことを思っていると目の前で黒髪の子が西洋の子を殴りだした。あらあら、本当に過激。西洋の子は殴られるのが好きなのかしら?笑っているし……そういう性癖っていうのがあるって知っていたけれど……すごい、としか言えない

暴力はあまり好きじゃない。でも他人が暴力を振るうのには理由があるだろうし、その人のしたいことだから私はなすがまま
その人のしたい事を邪魔するって言うのはその人を拒絶しているそのものでしょ?受け入れなくちゃいけないの
だから私は目の前で行われる行為をただ見つめる。そうしていると黒髪の子は終わったのか、一息をついて私を見てきた

「……これ、誰にも言わないでくださいね」

不敵な笑み。でも子供がイタズラをしたときみたいな笑みとも似ている
……彼女は感情豊かみたい

「……あなたは、その西洋の子が嫌いなの?」
「西洋?……ああ、市ノ瀬ね。うん、大嫌い。顔なんて見たくないのにいつも会うし、あげくのはてに追ってくるし」
「……好きって言ってる子なのに、嫌うの?」
「当たり前ですよ。私が嫌いなんですから」

私のたまたま出た質問に答えてくれる彼女は本当に西洋の子を忌々しそうに見る
その目に映るのは全てにおける拒絶

…………羨ましいって、言ってしまっていいのかしら
私はあんなに拒絶することはできない
私は弱い人間だ。全部受け入れて、全部流さないと全てが怖い
自分の中で拒絶するのも、留めておくのも、怖い

「……そんなあなたにこれを上げる」
「ん?」

私はカゴからクレマチスという花を黒髪の彼女にあげる
彼女は意味がわからないと言った表情。私はにっこり笑う

「……美しいままでいてね」

意味深と取られるでしょうか。その時はその時です
私は微笑んだままその場を去りました



  


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