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珍しく感じた恐怖
それから逃げるように走ったわけだけど、失敗だった
またわからない空間に逆戻り。ついでにもれなく迷子です

うへー。方向感覚悪いのにー
あーもー、どうすれば――

後からの気配に前へ飛ぶ。空中で態勢を整えながら、さっきまでオレがいたところを見ると何かが刺さっていた
そこから本能が危険と察知し、視界をモノクロに染め上げる。戦闘開始。そういう合図だ

「……誰だ」
「……」

返事はない
モノクロにしかわからないけれど、笑っているその人からはどこか知った雰囲気が出ている
誰かに似てるような……

走ってきた相手を避け、蹴りを入れる
慣れてるのか見事に避けられ、今度は何かを振りかざしてきた。避けながらで少しだけ見えたそれは、ナイフ
しかもサバイバルナイフとかで使用されそうな大き目のもの。うわっ、殺す気かよ

こっちは武器はなし。明らかに不利
なんとか避けて軽くでも反撃しているけれどうまくいかない。おかげで段々とイライラしてきた
そこで笑った顔なんて見たら、なんか、そう、この感じは

「クソ先輩共がぁああああああああ!!!」
「あ゛あ゛!?」

頭にチラついたのはオレに厄介事を持ってきては絡んでくる、おみくじで言えば大凶の狂乱先輩たち
おかげで一本背負いを綺麗に決め、首絞め技をしてしまった。気絶しただけみたいだから大丈夫
オレ悪くない

大き目のナイフは危ないってのもあるから拝借し、男は寝かせておく。また起きたら面倒だけど、縛るものないし
さて、さっきのパーティーといい、この危険といい、本当にここはどうなっているんだ?

少しでも落ち着いてきたのか、モノクロの視界に色が戻ってくる
でも気を付けよう。赤色はダメだ
少しばかり警戒しながら見えてくる色の中、知らない人が増えていた。今まで戦ってたからって気づくはずなのに、気付けなかったその人はオレを見ながら何か描いている

その体勢とか、その人の近くにある物とか道具は絵を描く物
……画家?

「あ、の……」
「すまないがまだ動かないでくれ」
「はぁ……」

どうやら本気で描いてるらしい
動くなって言われたりもあって動かないでいるけど、体がうずうずする
オレは美術時間は苦手だったりする。とくにこういうペアを組んでの描きあいが
なんで人を絵に描こうとするのかわからないし、それよりも体を動かしたくなるし。第一に、なんでペアの人を書くのか目的がわからない

思い返せば溢れてくる記憶の渦に沈みかけ、画家の人に声をかけられて我に返った

「うーん……何か足りない……何が足りないと思う?」
「え……いや、オレは美術が苦手なんですけど……」

赤色、トラウマだし
もしも赤色を見て気絶しないよう、なるべく警戒はしておく。油断してたらモノクロに変わらなくて面倒なことになるからな
倒れてる人も気にしながら、画家の人の横に立ち、絵を見た
そして、見たことを後悔した

確かに、そこにはオレが描かれていた。学ランに、持っていた大き目のナイフも一緒に
けれど描かれているオレの影は狼のような顔が伸びているし、黒くてよくわからないモヤのようなものに包まれている
それは、酷く何かに似ていて、でもわからなくて

頭が痛い
赤色を見たわけじゃないのに、記憶が瞼の裏で昔の映画みたいに流れる
何か、覚えていた何かを思い出そうとするのに、体が拒絶し出してるのか汗も出てきて、呼吸が浅く繰り返される

「ど、どうした?」
「あ、ちがっ、おえっ、きも、ち、わるいっ」

自分に伸ばされた画家の手にすらも、何か感じて後ずさる
警鐘のように頭の痛みがリズムを刻みだす。ここにいちゃいけない
そう思うのに、体がうまく動かない。それが余計な焦りと混乱を招く

何か言われているのに、何も聞こえない
もう、嫌だ
途切れかけている意識を手放すのは簡単だった

  


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