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荷物持ちといってもこの祭りで出てるのは屋台が主で、そうなると食べ物が多い
大体が食べることになるから、荷物になるのはそうそうない

「おじさーん、この焼きそば五十箱くださーい」
「…………金は?」
「なんとここにアルのお金があります」

……ないと思ったが案外すぐに荷物が増えそうだ
五十箱買って後どうするんだ?
そう考えているうちに荷物が渡されて考えは霧散する

こういう屋台ものって冷めるとおいしくなくなるんじゃないか?保温させてた方がいい気がする
鷹野の一人娘は次の食べ物に目が行ったのか、そういうのは考えていない

「…………おい」
「はい」
「……保温」
「了解しました」

普段は遊也しか使わない護衛を使って保温を任せる
狂乱家にいる奴らは大体遊也の趣味や性格によってそれなりに護衛とかしてる
俺は正直いらないと思う。さっきのはラクだけど、話すのが面倒

鷹野の一人娘の方を向くと、おもしろい物を見つけた遊也の時と同じ顔していた
どうしたんだ?

「今の誰?」
「…………」
「うわ、護衛とか超ラクじゃん。それじゃあガンガン物が買えますね」
「…………」
「話すの怠い?お兄さん話してるじゃないですか」
「…………」

……無自覚だったらしい
そんなに俺は表情に出やすいのか?学ランチビの朝霧影は表情読み取りにくいって言って来てたし……自分のほうが無表情のクセに

帰って朝霧影に会って潰し合おう
突発的にそう思っていると腕を引っ張られた

「次行きますよ次!」
「……はぁ」

ダメだ
こいつのペースに合わすとどれもこれもめんどくさくなる。おかげで考えてることが全部消えてく
ため息をついて、悪戯するみたいに笑う鷹野の一人娘に付いて行くことにした。無駄に考えることは今だけやめとく

食べ物や服、雑貨店
町自体が祭り騒ぎなのもあり片っ端から目に留まったところに行く鷹野の一人娘はどこから出すのか大量のお金を使っていく
アル……って言ってたからあの甘党から盗んだんだろう金は容赦なく減っていく

「おにーさん、はい」
「…………いらない」
「折角私が手がふさがって食べれないおにーさんのために焼き鳥買って来てやったんですよありがたく食え」
「…………」

ちょっとだけ食べてこっちに向けてきた焼き鳥はおいしくなかったみたいだ
食べたくないと目で訴えても、笑ってただ食えという圧力を向けられる。それに従う気はないが、だからと言って殺意が芽生えるわけでもない

そんなものより酒が飲みたい
ため息をつこうとした瞬間、それを見計らったかのように口の中に焼き鳥を突っ込まれた
痛い。串の先が刺さった

「……ふぉい」
「おいしいですかよかったですね」
「……」

睨んでも黒いオーラが見えてくる、意味がわからない笑みを浮かべたまま鷹野の一人娘に呆れ、仕方がなく食べる
食べてくれるとわかったのか、鷹野の一人娘はまた笑った
……これ、酒に合いそう

「はぁああああああ!?何それ唯ちゃんと間接キッスじゃん!!?」
「ちょwwwww珍しもの見ちゃったよwwwえ、うそwww勇士ってそんな貧乳好みだったっけ?僕お腹痛いwwwww」

体中に刺さる殺気と耳を貫通するようなウザい笑い声
その声に顔を顰めたのは俺だけじゃなく、鷹野の一人娘も声の方を見てあからさまに顔を顰めた

人混みの中でも目立つオレンジは片割れで、あと一人の金髪の女は誰だ?
どちらにしろ、面倒なのに変わりはない

「……」
「ちっ。どこから出てきたんだ市ノ瀬め。こうなったらコンクリートに詰めて海にでも落として来ればよかった」
「…………」
「あんなのは知り合いじゃなくてストーカーっていうんです」
「………境希現、女版」
「なに唯ちゃんとアイコンタクトしてるの!?死ねばいい!!」
「へー、珍しい。勇士とアイコンタクトできるなんて。もしかして同類?」

少年漫画であるゴゴゴゴゴゴとなってそうなの背後に流す金髪の女は武器は持っていない
素手でやるのか?

対して遊也はここぞとばかりに鞘に入ったままの刀を構える
最近暴れることが少ないから発散しようと楽しむ気満々だ

「……」
「うん?僕が誰かに手を貸すなんて珍しい?くすくす、彼女は市ノ瀬グループの娘さんでね?恩を売っておくのも悪くない物なんだよ」
「…………てめぇは一片、死んだらいいんじゃねーか?」

歪んだ笑みを浮かべる遊也
多分俺も笑ってる
外見は似てないけれど双子だから似てるとこもある
それは全部歪んでる

一応鷹野の一人娘の荷物は安全地帯に置く
周りの奴が危険を感じて距離を取った中、俺も遊也も構える
少しの間、どちらからもなく走り出した

「――だかウザいって言ってんだろクソ市ノ瀬!!!」
「「……」」

どこから出したのかわからない大砲に火をつけた鷹野の一人娘によって金髪が黒こげになった
そこを容赦なく踏む鷹野の一人娘に俺も遊也も止まる

遊也はいつもの笑みを浮かべながら冷や汗を流して
俺は殺意が萎えて、鷹野の一人娘に感心して

「ホント、最悪、なんで、私が、変態に、追われなくちゃ、いけないのっ」
「ええー……容赦ない……」
「そこのオレンジ髪の人」
「うん?僕?」
「よくも私の楽しい時間(アルの金がなくなるまで遊ぶ時間)を潰してくれましたね。この変態の仲間っていうなら容赦しないので……」
「え、ちょ、僕にも砲丸撃つの!?さすがにこの近距離じゃ死ぬ――」
「鷹野の一人娘、こいつは頑丈だ。殺れ」
「――ちょ、」
「死ねぇえええええええ!!!」

一回目の弾は避けた遊也に追撃が行く
俺は疲れたと荷物の方に行き、終わるのを待つことにした

  


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