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「夜美!!無事か夜美!!」
「……え、あ、シバ?」

小娘と同じ満月の瞳と黒髪。その気配は恐怖を抱かせながらも尊さを醸し出す
何故破壊神の一人がここに……いや、そんなことは簡単なことか
これで小娘の気配の正体がわかった

「なるほど……通りで人の子としては異質な小娘なはずだ」

神と人の子。いくら人と交わろうとも、流れる血はその色を濃く持ち、保つ
故にこの世では、人の世界ではさぞ生きにくかろう

だが、だからと言って人ならず者たちの世界にいたとしても人間の心を持つ小娘には生き難かろう
どちらにもなれず、歩むことに恐怖する小娘を、我は見つめる

「哀れだな」

小娘が我の声に反応し身を震わす
満月の瞳は雲がかかったように、黒くなっていく
……血の証の瞳、か

「人としても、人ならず者でも、生きて行けぬ哀れな者だ」
「夜美を悪く言っているのならば、許さんぞ!」
「哀れな人間の子と生まれし異形の者。そなたが望めば、我はそなたを殺せる。……そなたが望むのであれば、手を貸そう」

耳障りに声を荒げる堕ちし神を無視し、我は小娘を見つめる
願いを叶える気などない。だが、堕ちた神とはいえ我が憎むに変わらぬ者の愛しき者の一人を奪ったのならば、少しは我の気が晴れるのではないのだろう

我は知っている
愛しき者を失くすことにより起きうる感情を
だからこそ、我はそれを使おうとする

「私は……」

突如黒きモノが我を包む
そして今いたところから大分離れたところへと我を移し、置く。特に何も思わず、見れば先ほどまで形あった物は全て、消えていた
建物は壊れ、微かに煙が出ていることから火事になるだろう。ふと空を見れば、まもなく雨が降るほどには黒く重く垂れていた

……火も、雨も、好きではない
嫌いだ。降り出す前に帰らなくては

「夜美を誑かすな!!」

怒りだろうか。焦りだろうか
どちらでもいいが、さすが堕ちても神ということか。我らり他に人がいたのにも気にせず、その力が及ぶ範囲、全てのものを壊した

このような力をあのような小娘も持っている
本当に、哀れな存在だ

「身勝手な神と人の思いにより生まれし存在よ。そなたには、さぞどの世界も苦しかろう」

満月ではなくなった闇とも似ている瞳
死にたいと願うであろう。だが死ねないと嘆くであろう
例えどれほど己に誰かの生が絡んでいようと、気付かぬほどの死への執着に身を投じる

「……本当に、哀れな存在よ」

我とはまた違う、化け物よ






  


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