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「……好きってわけじゃないが、俺の知り合いにもそんな奴がいる」
「あー……うん、多分夜美ちゃんのことかな」
「……夜美ちゃん?」

とても聞いたことある名前
そうだ、うん、確か

「影さんに近づく僕の恋敵の名前と似てますね?」

その子の名前もそんな名前
この町に来たのも影さんがその子と関わってるから
なんであの町から出るかな?行動範囲が広がったら影さんのことを好きになる輩が増えるっていうのに!!

僕の出した影さんの名前を聞いた途端、優さんの顔色が悪くなった
リベンさんもなんとも言えない顔をしている

「え、あ……影、君?」
「……なんとなくひっかかてた理由がわかった……」
「……あなた方も影さんに近づく人ですか?」

影さんに近づく輩はちゃんと見極めないと
僕にとっての有害は、処分しないといけないから

「ち、違うよ!私の友達のその夜美ちゃんってこの友達だなぁって」
「如月が言っていた……」
「……ということは、夜美ちゃんというのは僕の恋敵ってことですね……」

意外と世間って狭い……
この人たちに聞けばその夜美って人がわかるかな。なんでだか、その人の情報は出にくかったし
……理由はわかってるけどさ……裏関係者だからって……

「こ、恋敵って……影君は……」
「……似たもの同士ってことか」
「似たもの同士?」
「夜美も同じようなものだからだ。あいつも、自分の幸せを『♪〜♪〜』」

リベンさんが何か言いかけたところで電子音が鳴った
少しだけ眉間に皺を寄せて席を外した。ケータイを出し、耳元に寄せてる
小声で外国語の会話だけど……僕は外国語は全部習ってるし、小声でも影さんの声を聞き落とさないようにしてるから聞こえちゃうから……

忌々しそうにケータイを切るリベンさん
そんなリベンさんを優さんは不思議そうに、心配そうに見ていた

「仕事?」
「ああ……悪いけど、帰るな」
「ううん。頑張ってね」
「……死なないように、ですね」

ワザとらしくいえば最初と同じ睨みを頂きました
わー、ちょっとからかっただけなのに。死と隣り合わせの仕事なのは間違いないクセに睨まないでほしい
とりあえず、僕が優さんに何かしないっていうのはわかってくれたかな

「リベンくん……仕事大変そう」
「……そういえば、優さんは好きな人はいるんですか?」

何気なく聞いたことに優さんの顔は赤くなったり青くなったり
動揺しているのは丸わかり。心の中で笑ったのは内緒

「い、いいるけどどど……叶わないかな?」
「叶わない?」
「うん!……好きなんだけどね」

そう言って笑う優さんは……悲しそうだった
僕はわからない。だって叶わない恋をしたことはないから
叶わないなんて、ない
何としてでも、どんな手を使ったとしても

絶対僕の好きな人を
影さんを手に入れるから

「優、途中で雨に降られたから雨宿りさせ……」
「風来じゃん。うわっ、びしょびしょー」
「……こんにちは」

また新しい人が来た

* * *

新しく来たのは風来さんという学校教師らしい
出張帰りがなんかだろうか。まともな教師……に見えるけどどうだろ?ふつうクラスの担任でさえまともじゃないから……

「優が恋愛相談……ちゃんとできているんでしょうか」
「できてるよ。ね、現君」
「はい」

僕の話は惚気だとか危ないとか言われるから聞いてくれる人がいるのは本当に嬉しい
なんで皆僕の話聞くのが嫌なのかな?こんなにも影さんの魅力を言っているのに!

「では具体的にはどんな質問を受けていたんです?相談というのは質問がなければ成り立たないじゃないですか」
「う」
「相談内容は主に『どうしたら好きな子に振り向いてもらえるか』です」

正論を返されてる優さんが可哀想だったからつい手を差し伸べてしまった
影さんならそうしてただろうから、僕もついついそう思うとしてしまう

「そ、そうそう!私は……少しずつアピールしていくのが良いと思うんだ」
「しつこいと思われるのでは?待っていれば、流れて頼ってくれたり……」
「……待っていたら、頼ってくれません。どんどん自分で溜めちゃう人なんです。強いのに、脆くて、壊れちゃいそうで……」
「……それでも、自分から申し出るのは厚かましいと思いますけどね。……少しでもその人の役に立てたらいいじゃないですか。……自分がその人のことを幸せにできるかもわからないのに」


  


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