[ 6/8 ]


星 side

追いかけてたその人は裏路地に入ってった
裏路地は嫌いだけど今はそうも言ってられない。少しだけ躊躇ったけど裏路地を進んだ

日の光なんて入らないそこは少しだけジメジメしてて微かな異臭がする
引き返そうって頭の中に誰かが囁いてくるのを無視して走ったら拓いた場所に出た
けどすぐその視界は何かわからない大きなものが飛んできてふさぐ。急いで後ろに跳んでつい反射的に銃を出した

そこで何が起こっているのかやっと視界に収まる
跳んできたのはそれなりに大きな鉄鋼で、その向こうであの男性と見覚えのある赤髪が戦ってた

「……勇士、先輩…?…」

獣のように見開かれてる目はあの男の人しか見えてないようで、執行に追ってる
間違いなく、戦闘モードの勇士先輩。なんでこの人がいるんだ?

男の人は無表情に勇士先輩を見つめ冷静に銃を撃つ
それに対抗してる勇士先輩は何も持っていなくて、けれども銃弾を避けたり近くにある建設ビル用の鉄骨ので応戦してる
愉しいと言わんばかりの笑みを浮かべ、勇士先輩は動く。あの勇士先輩の服装がスーツ姿に黒の手袋?みたいなのしてるからこれは只のケンカとかじゃないってわかった

「大丈夫ですか?」

自分に掛けられた、と思う声で我に返る
茶髪で緑?の目をした執事……みたいな人が近くにいた。この人に話しかけられたのか……

本当ならこんな場でのことで焦ったフリでもしたほうがいいのかもしれないのに、なんでだろうね
今度はこの人から目が離せなくなった
ただ薄ら笑みを浮かべるこの人から

「おかしいですね……一般人が入ってこないようには手を回していたんですが……」
「………なに、してるんですかあの人たち?止めないんですか?」
「なんで止める必要が?」

微笑んでるはずなのにその瞳には黒い何かが見え隠れする
関わるな。早く逃げろ
そう頭の中で繰り返される言葉は処理できなくてただコマーシャルのように流れてて

その人が俺から目を逸らしてまだ戦ってる二人を見る
勇士先輩じゃなく、その目はあの男性に向けられてた。その目が語るのは、よくわからない喜びの色

「……あ、うあ……」
「……ああ、怖がらないでくださいよ。僕は危害加える気なんてありませんから」
「…………あはははは」

笑い声が漏れてしまった
不審な目を向けられた気がするけど、笑ったのは俺であって俺じゃないんだから勘弁してほしい

何が楽しいのかわからない
だってそんなこと考えるよりも先に脳は掻っ攫われた。誰に?俺じゃない俺なんて中二っぽい説明で勘弁してもらおうかな
笑って、乾いた声漏らして、顔を上げた時どんな表情をしてたかなんて知らない。知らなくていいよ

「……みーつけた」

その声は確かに俺の口から出たと思うのに
子供みたいな声。俺は変声期が終わってる方だからそんな声出せないはずなんだけど

その人の目が見開かれる
本当ならこのよくわからない張りぼての感情に身を委ねて目の前のこの人に手を出したいけど自分の意志で切る
だってその体は別の人のだから。魂だけの存在に肉体攻撃なんて、無意味すぎだよ



  


第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -