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影side


あの笑みが嫌いだ
あの神経を逆なでる声が嫌いだ
あの人の存在自体は……嫌いなのか?

「―――っつ、いって!?」

何かの反動のように跳ね起きたら頭に鋭い痛みが走った
うおおおお、ちょーいてえええええ……

髪結いを取り痛む場所を手で確認する
……たんこぶになってんな……出血は……内側でしてたらいろいろヤバいぞ
……ん?ここはどこだ?

痛みのほうを優先にしてたから気が付かなかったが、そこはどっかの部屋だった
アパートってわけじゃなさそうだし……家内?ってことはここは誰かの家?
オレの記憶が正しければ裏路地にオレは倒れてると思う。混濁してる意識の中でもちゃんと周囲を見回してたはずだから
看護でもされていたのか、ご丁寧にふとんが……ん?あれ?肩がスースーする……

まさかと思って背中を見るけど学ランがない
周りを見渡すけど学ランらしきあの黒いのがない
待ってウソだろ!?あれ……よく見ないとわかんないだろうけど学ランの裏に武器仕込んでるんですけど!!
どうしよどうしよ、と、とりあえずここの人探すべきか?

「あ、気がつい「その学ラン返して!!」」

ドアの開く音で見れば二人の男女
茶髪?の男子が持ってる学ランにしか目がいかなくて、大変失礼なことを吐いたと思う

* * *

「きゅ、急に失礼しました……オレは朝霧影って言います……」
「私は田村沙弥って言うんだ。で、こっちが平城真也」
「は、はぁ……沙弥さんと真也君、ですね……」

返してもらった学ランは無事オレの肩にかけた。重みは……鉄パイプが二本ないからか少し軽い
沙弥さんは中性的な顔立ちで服装とかで間違えそうだが女性ってことがわかる。大体女性と男性の骨格や筋肉の付き方は違うんだから間違えたりしない
真也君は……何故かさっきから凝視されてる。え、なに?なんなの?もしかしてオレの学ランの秘密に気付いたとか?

そんなに凝視されては変わらない表情の裏で怯えなくちゃいけないじゃないか
オレのこと良く知ってる人は怯えてるとかわかるんだろうけど
真也君ばっかに視線をそらしていたからか、沙弥さんが真也君の方を向いた

「平城、そんな目で見てたら怯えちゃうよ」
「え、あ、ごめん田村さん」

……なんか犬の耳と尻尾見えた。幻覚か?
って待て。どこかで聞いたことあるフレーズが……平城?うーんと……あれ?平城って……

何か引っかかって考えてるとピンポーンと明るい音がなる
玄関のチャイム音?……あ、チャイム音といえばうちの壊れたの直してねぇ

「誰か来たのかな?」
「私が行くよ。私が返ってくる前に平城はその子に謝ること」
「あ、田村さん!」

すたすたと部屋から出て行った田村さん
うわー、なんかすっげーカッコイイなあの人。凛としてるって言うか……

田村さんが出て行ったドアを見ていたら嫌な視線を感じた
殺気にも似たその視線にドアから発信源である平城君に向きなおる

「……なんですか」
「……田村さんに手を出したら許さないよ」

平城君の目に浮かぶのは二つの感情
その一つはよくわからなくても知っている
だってそれは、あのバカが毎回オレに向けてきて、言ってくるモノ。正直言って、オレにはわからないモノ

「……手、か……」
「姉ちゃんの知り合いかなんか?その学ラン、田村さんに見せられたものじゃないんだけど」
「……姉ちゃん?平城君の姉って誰?」

こんな危ない学ラン持ってて知り合い扱いされるってことは裏の人だろうか?
オレの良く知っている人……としては可能性が低いとして先輩関係なんてあるかもだし……

平城君の姉がどんなのか想像していたらドアの向こうから足音が聞こえた
騒がしくて、言い合いしているようで……田村さんの声と一緒に違う声も聞こえる。ってこの声……

「だから待って下さい!」
「おい、化物はいるか?」

勢いよく開けられたドア
そこにいたのは、最近部屋にこもりっきりで生死不明になりかけていた奴

「……ハッカー、人様の家で何してんねん」
「ここに居たかモノクロ破壊者。この貸しは今度貴様を実験することで返させて貰うぞ」
「影君の、知り合い?」
「……化け物……」


  


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