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幼くなった荒と冷静でも混乱状態の俺の前に現れたのは現代ではそんなに見ないメイド
ただハァハァ息が荒く目は据わりながら荒だけを見てる。微かに「ショタ……」と聞こえるけどスルー
………女性だから乱暴しちゃダメだよね。やりにくいなぁ

「せ、星ぃ……オレはどうすればいいんだよ!」
「うざい。引っ付くな」

メイドの視線に怯えてるのかビクビクしながら俺の足元に引っ付いてくる荒にイラッとなる
お前不良だろ?異名付きの不良で強いのになに怯えてるの?バカなの?うざいからくんなよ
俺を見上げくるバカをイライラして睨み返していると鉄の臭いがしてきた
……この臭い、血?なんで……

「ショタが涙目で……冷たく見下されて……ハァハァ……萌える……!!」
「……」

メイドが鼻血出してた。……不審者じゃん
うわー、なんでこんな人が来たんだろ。荒なんて「ぎゃあああああああ!!!?」うるさっ!?鼓膜破れる!
なんで叫ぶの!?お前血なんて見慣れてんだろ!!

「ショタ〜……」
「くんなぁああああ!!」
「……いい加減にしてほしい……」

* * *

「うちのメイドが連れに迷惑を……」
「いえいえ、特に気にしてませんよ」

外面よく笑顔を務めて淹れもらった紅茶を飲む。おいしい……
あの後我に返ったメイドに連れられて来たのは伯爵家という屋敷。伯爵なんて……タイムスリップでもしたのだろうか?

「ショタ……」
「こっち見んな変態!」
「ショタの罵倒なんておいしいっす!!」
「ああああああ!!」

メイドさん……ツバキさんの相手は荒がしてるし、無視すればいいや。さすがにツバキさん相手にしてると笑みが崩れそうだ
どちらかといえば真面そうな伯爵のカインさんを相手にしてた方が楽だし、それに、聞きたいことは結構あるし

「カインさん、でいいですか?」
「好きに呼んでくれて構わないよ」
「では俺は星、あっちは荒と呼んでください。カインさんは俺たちの事、怪しいと思わないんですか?」

まずは俺たちがカインさんにとってどう思われてるか、だよね。この時代に学生服なんて存在してないだろうし
そう簡単に伯爵なんて位の人が信用したりするの?

「うーん……ここにはいろんな人たちがいろんな時代から来るからね。君たちを怪しいとは思わないよ」
「……」

にこりと笑うカインさんの目は嘘を言っていない。……お人好し?それとも危機感がないのか?
どちらにしろ、なんでだろ……

この人、いつ死んでもおかしくないね

「星ぃぃぃいいいいい!!」
「ごふっ!?」

腹に衝突された!紅茶吹くとこだった!!
痛みがするほうを睨めば、やっぱり荒だった。こいつ、小さくなったからって……

「助けてくれ星!!」
「……荒、いい加減にしないと銃で撃つよ?」

小声で脅しながらセーターで見えてないけど中に持ってる銃をチラリと見せる
さっと青くなった荒は学習能力が本当になくて残念な脳みそだ

「えっと、改造銃ぐらいなら……」
「水保君はバカすぎだね?……実弾も別で持ってんだよ」

ぼそぼそと小声で話しながらズボンのポケットの中から銃弾セットを少し出して見せる
うわーという残念な表情はいらないので頬をつねってやった

「いひゃいいひゃいふぇい」
「何言ってるかわかんないよ」

若いから頬のもちもちだな。姉貴がなんで小さいころ頬を触ってきたかなんとなくわかったよ

「羨ましいっす!ショタの頬を触れるなんて!」
「ツバキ、反省しようね?」

……あっちでカインさんに捕まってるツバキさんは違う意味で触りたいんだね
姉貴にあんな属性はない、というか本人自身ロリよりショタみたいな外見だからそんな属性持ったら最悪だよ

にしても、荒がこのまま小さいといろいろ不便だ。あっちの世界に戻ったら姉貴繋がりでマッドサイエンティストに荒を治してもらえるだろうけど、荒の一部がなくならない保証なんてないし
チラリとカインさんとツバキさんを見る。なんか言い合ってる二人を見て、二人の目を見て、少し後悔した
そしてお節介で邪魔ないい案が浮かんだ

思い立ったがなんとやら。実行するため、つね終わった頬を抑えてる荒の耳元であることを言う
荒は聞き終わった後「えー……」とのり気じゃなかったけど微笑んだら動いてくれた。……荒、あとで痛い目にあわらるからな。俺の笑顔に青い顔しながら従うなていい度胸だね

「お、おいメイド!いい加減元に戻しやがれ!」
「い、いくらショタに言われてもいやっす!」
「ツバキ?」
「ひっ……こ、これがそれの解毒剤っすが、今はこれ一つなのであげれません!もし伯爵が坊っちゃんになったら……!」

? なったらなんだと言うのだろう?
不審がってツバキさんを見ていたら、カインさんが俺のもとにやって来てこっそり教えてくれた

「私は難病にかかっていてね……ツバキが病気の進行を遅くするために作ってくれたのが君の連れにかかった薬なんだ」
「……そうなんですか。でもそれならなんで解毒が必要なんですか?」
「私もよくわからないんだが、最近はツバキがよくあれも一緒に持ってるんだよ」

言い合ってる二人を見るカインさんの目はどこからどう見ても優しい。こんな目、たかがメイドごときにするはずがない
それにしても、なんとなくこの人の寿命は本当に短い気がする。難病持ち……か

……嫌だな。カンがいいのも、人の目と感情に長けてるのも
俺は、普通≠ネのに

「食らえ変態女!」
「ゴフッ!?」

自己嫌悪に落ちかけていたら荒がツバキさんにアタックした。子供とはいえ、荒は異名持ちの不良。それに加えツバキさんは女性
俺の目ではゆっくりと背から地面に落ちてくツバキさんが見える

忘れてた。今は俺の台本が行われてたのに
演技を忘れてる隙なんてないのにね。自嘲気味に笑いながら、カインさんより速くツバキさんのもとに走り支えた

「わっ」
「大丈夫ですかツバキさん?うちのバカがすみません」
「あ、いえいえ。私は大丈夫です!」

にっこり笑顔で言ったのに、ツバキさんは頬を染めたりしない。これが普通なら、ちょっと困るんだよね
気を引いてもらうためそっとツバキさんの頬を触った

「……?」
「……ツバキさん。顔に土がついてますよ」

本当はついてなんかいない。けどどうしても計画には必要で、優しく、拭うように手を動かす
視界の端でカインさんが立つのがみえた
狼狽えるツバキさんの目を確認して、顔を近づけ小さな声で言う

「          」




  


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