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夜美side

任務が終わった私は部屋から出せれた
出せられたとは違うかな?さようならってしたわけだし

それにしてもなんだかあのリジチョウという人間は少しだけおかしかった、かな
……まあいいや。それより影を探しに行こう

もうこんな怪しい私と関わるのは嫌かもしれないけど案内してくれたお礼はしたほうがいいだろうし
それに私はあの子のこと勘違いしてたから謝んないといけないと思うんだ。あっちも私のこと勘違いしてるだろうから説明を――

どぉお………ん……どご…………

それは微かだけども聞こえた
物が壊れる音はよく戦場とかで聞くけどもここはガッコウというところ。そんなの聞こえるはずないのに確かに聞こえたんだ

大きな音がする方にいけばいい

そうリジチョウという人が言っていたことを思い出す
本当は、いっちゃいけないんだろうけど。ダメだって、頭ではわかってるんだけど……

足には自信があるから早く早く音のほうに走っていく
音は近づくにつれて大きくなって激しさを増す。何が壊れる音すらも聞こえてきた
影は無事かな?怪我してたらどうしよう

そう思って大分音が近くなってた廊下の角を曲がった

「―――ガハッ!!?」
「……え?」

私の目の前を横切るように黒い何かが壁に衝突する
壁はぶつかったのから中心的に壊れた

私は私にしてはことの状況がわからず固まる
けど、その黒いのがなんだかわかった途端急いで近づいた

「影!!」

口の端から血を流すボロボロの影
他の場所かも血を流しててワイシャツには血が付着してた

「影、影、影!起きて影!」
「……夜美、ちゃん?」

よかった。生きてる
けどこんなになるなんて……どうして……

「あっれ〜?めっずらしー!バケモノに近づくキチガイがいるよぅ!」
「っ」

バケモノ……って私のことだよね?あれ?でも近づいたのは私だ
勢いよく声の方を見ると、ニタニタ笑ってて刀を持ってるオレンジ髪の奴がいた
その笑みは決していいものじゃなく、化け物の私でも気持ち悪いと思った

「ううーん?でもでもー、バケモノにロリの知り合いっていたっけ〜?……くすくす、そっか。君が使いの子ね?」
「……何のこと?」
「くすくす、そう睨まないでよ。ゾクゾクするけど個人的に怒りだけのはいらなーい。君の名前、平城夜美でしょ?身長小さいけど20代で三Kとか鬼神って通り名の!」
「!」

それは私が学生時代周りが言っていた名前
なんで、こいつがそんなの知ってるの?ここに私はきたことないのに

オレンジ髪の人間の目が笑う
その目は私を軽蔑してて、私を嘲笑う

「そっかそっか化け物同士仲良くなってもなーんの不思議もないよね〜。なんてったって人間離れしすぎてるんだもん!意思相通できちゃって勝手に感情の芽ができるはずさ!!」
「……黙れ……私は、確かに化け物かもしれない。けど、影は人間だ!!」

影はどこからどう見ても人だった
化け物の私がそう判断できるほど。だって影は私を助けてくれた。怪しい私に付いてくれてたり、目的地に案内もしてくれた
そんな影が、私と同じ?だったら私は、死なない私はなんなだ!

殺してしまいそうになるのを抑えてオレンジ髪の奴を睨む
オレンジ髪の奴はさっきより卑しい笑みで、見下した目で私と私の『後ろ』を見てた

「バケモノは人間と違いすぎて理解できないな〜。面白いからいいんだけとねっ!くすくす、ちゃーんと片腕折って片足の骨にヒビ入れてあげたのにまだ抵抗するの?しちゃうの?無駄足掻き、だーいすきだよバケモノ!!」
「……か、げ?」

後ろに目を向けると影が立っていた。肩にかける学ランをふわりふわりとそよがせながら
無表情に、静かにオレンジ髪の奴を見ていた

「黙ってください先輩」

足にヒビが入っただけで人は痛みにのた打ち回るのに
動けなくなるかもしれない恐怖で立ち向かわないのに

「殺し……はしませんが、夜美さんに乱暴しようとしてんのは止めます」

両腕の骨は、さっきの話では折られたって言ってた
なのに影は何ともないように私の前に立って構えた

「さあ先輩。女性に手を出した罪は重いですよ」
「くす、あはっ、あははははははははは!!サイッコーだよ君の自己回復力とともに折れない最低最悪の意志!!ホント、厭きなくて楽しくて殺したくなっちゃう!!」

狂ったように笑い出す人間……いや、あれは人間なのだろうか?
私は職業柄いろんな人に出会ったけれども、アレは人の中でもおかしい

化け物の私なんかより自分守って欲しく影の前に行こうとしたら、いつの間にかこっちを見てた影と目が合った
真っ黒な目に映る金色の私の目は人じゃないって再度私に思わせる
それが悲しくて、影に拒絶されるかもって思って目を背けようとした

「……夜美さん。年誤解してすみません」

影の無表情が、少しだけ緩んだ
黒目には、優しい何かの感情

「よくよく考えれば初対面にしては慣れ慣れしすぎました。ごめんなさい」
「……ち、違うよ?私がちゃんと言わなかっただけだし、それに私だって――」

私だって、影のこといろいろ誤解してた
そう言おうとしたら、私の喉元を何かが掠った

「あっ……」
「あなたをこの町から逃がします。オレは裏社会とか詳しくないんですけど、夜美さんを逃がすというのはもう決めました」
「な、んで……」
「巨体の像、正確には順応力やどんな生物にも効くよう作られた睡眠薬です。……オレ専用らしいんですが、効いてくれてよかった……」

体から力が抜けてく。視界も定まらなくなってきて、このままじゃ寝ちゃいそう
それはダメだ。影を守んないと。折角できた……なのに……

「夜美さん、―――――」







最後の影の言葉聞こえず私は眠りについた
起きたときは組織のところに戻っていた
クロウやリベンに聞いても、ただ「黒髪長身の男とエメラルドグリーンの髪の女が私を連れてきた」というだけで詳しくまでわからなかった

あの町には仕事が忙しくてなかなか行けない
私は、影がどうか無事であるようにと、願うしかできなかった


  


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