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理事長side

私はただ微笑んだだけなのに朝霧影の目には憎悪にも似た感情が見え隠れしている
酷いものだ。私はこれでもマシなほうなのに。彼女にとってはそんなの関係ないのかもしれないけど

「私が選んだんじゃないよ。誰を使役するかは相手の勝手だから仕方がないだろ?」
「……それ以前の話だよ、理事長」

無表情の眉間に少しだけ皺が寄る
彼女は睨んでるようで、彼女としてはすごく立腹なのだろう
彼女の後ろから私と彼女を交互に見るお嬢さんは客観的に可愛い部類に入ると思う容姿。ここから簡単に導きだされる答えは簡単だ

彼女、朝霧影はこのお嬢さんを気に入った
それ以外の答えはこの悲しい子には浮かばない。浮かんでこない

「そう怒らないでくれ。君は外に行きなさい。それと、もしも彼が来たら――」
「あんたは守んなくても夜美ちゃんは守る」

その言葉と目に宿るのは決意にも似たもの
……似ている。どこからどこまで似ているのか知らないけれども、本当に彼に似ている
それに微かな苛立ちと楽しみを抱いて彼女を見送る
残されたのは私と事情がよく呑み込めていない少女。……少女の姿の女性かな

「今は秘書がいなくてね……こちらのソファーに座ってくれないかい?」

立ち上がり女性にソファーに進める
女性は少しだけ何か考えた後、私の指示に従った

「あんたは……」
「私はここの理事長をしている者だよ。ついでに君が会うべきように言われた桜瀬とも言う」
「……桜瀬……理事長をしている人が?」

その目には微かな驚愕の色が浮かぶ
そうだろうね。一応学校というのは聖職者がいるものだ
私はただ笑みを濃くする

「平城夜美……さんでいいかな?預かった物をいただけないだろうか?」
「!!……これ………」

女性、本名は平城夜美という彼女から少し大きめの封筒を受け取る
失礼だが中身を確認して確かに私が欲しかったものだと知る

チラリと、目の前の彼女に視線を送った
教えられたことでは彼女は人とはかけ離れた存在だそうだ
けれども外側は違和感がないほど人と似ていて、油断していたら彼女が何者かわからないだろう

その点で脳裏に浮かんできた存在に、彼女と重なった気がした
けれどそれはやはり一瞬で、歪んでいてもあの存在は彼女と違うだろう
歪んでいても正常なのだから

「ありがとう。確かに私が頼んだものだ。これはそのお返しだよ」

デスクから違う封筒を取りだし彼女に渡す
彼女はそれを受け取って胸元に入れた。袴というのはそうしてでしか物を隠せないんだろうか

「……あの、聞きたいことあるんだけど」
「なんだい?」
「さっきの……学ランの子にまた会えますか?」

それは私にしては不思議なことで
あの存在にとっては嬉しいけれども嫌なことだった

確かにまだ会えるだろう
いや、会ってしまうかもしれない。余計な存在付きで

私は崩してしまった笑みをまた戻して笑う
薄い薄い笑み。そんなのは自覚しているとも

「帰りは寄り道しない事をオススメするよ」
「?」
「……ただ、あんな存在にでも会いたいと思うなら大きな音がする方にいけばいい」

最も、そこで目のあたりにするのは異常で、ここでは正常な行為だけども

「それではおかえり。可愛いお嬢ちゃん」

彼女にそれを教えなくてもいいだろう
彼女は私の学校で囲う対象者ではないのだから




  


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