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困った顔の美少女と少しだけ同じことを繰り返したけど最終的に折れてくれた
それは少しだけつらそうで、けど嬉しそうなよくわかんない顔だった
迷惑な人だと思われたか、やっぱ。それとも変人?
けどこの美少女を一人にするなんてオレの選択肢の中にないし……

「ね、ねぇ」
「うん?」
「き、君の名前はなんていうの?」

名前?あ、言うの忘れてた
初対面だったら名前は名乗るって父さんから言われてたのにオレとしたことが……

「オレは朝霧影。よろしく」
「あ、あうん、よ、よろしく……私は、平城夜美っていうの……」
「夜美ちゃん?」
「え、あ、ちが……ううん、なんでもない」

どこかよそよそしい夜美ちゃん。オレと関わり合いたくない、そんなオーラみたいなのが幻覚なのか見えたり
……拒絶されない分マシだよな。ついでに不審者って言われるのより……不審者って言われたら笑いもの扱いされる

少しだけ気分変えよう。裏路地の景色とか少し珍しいし見たりして……ん?
夜美ちゃんの後に付いて行くよう歩いてるけど、ふと変わる景色に違和感をもつようになる
所々に見える表通りって、学校への道じゃね?

その疑問に答えるように景色は段々と見覚えある物になっていく
ここはこの前敵襲されたとこ……ここは紅ノ原たちと手合せしたとこだ
もしかして夜美ちゃんって……

浮かんだ可能性は二つ
けどどっちも良い物ではない。むしろどっちでもない事を祈りたかった
そんなオレの祈りとか関係無しに、現実はいつもシビア

結局ついたのはオレの学校
無駄にでかくて、いろんな人がいるってのが外からでもわかってしまう

「……やっぱ、ここか」
「影はここがどこだか知ってるの?」
「……オレの通ってる高校」
「……え?」

気が抜けたような夜美ちゃんの声を気にせず先に校門をくぐる
なんとなく、夜美ちゃんがどんな人なのかわかったけど別にいいや
夜美ちゃんは夜美ちゃんだし。……てかどっちらしろこんな美少女を使うとか最低だな。後でケンカ……自分から売りたくないけど売るか

「ま、まって影。影は何歳、なの?」
「……16か17」

後ろから急いでついてきた夜美ちゃんの質問は聞きなれた質問だった
当然だろう。この容姿というか身長。誰が高校生と思うか

別に悲観したりすることじゃないと思ってるけど勘違いはつらいな
あー、このパターンだと男と思われてるのかな?そん時は訂正すればいいか

オレはくるりと夜美ちゃんを見る
普通におかしいよね。袴来てる時点で考えればよかった
でももう過ぎたことだし、後悔とかないし気にしない

少しだけ動揺してるような夜美ちゃんにオレは訊く

「夜美ちゃんはどっちに会いに来たの?」
「え……」
「あ、ごめん。訊き方間違えた。誰に会いに来たの?兄弟の人?」
「確か……桜瀬って人に……」
「そっか。んじゃついてきて」

そっか。そっちの方なんだ
今度は逆にオレが夜美ちゃんを連れて校内に入っていく
ちょうど授業中のようで廊下には人っ子一人いない。でも油断はできない。あの先輩は鋭いから
近くの階段を上に上にと行き、最上階に到着。そして校内では奥の、一番立派な扉の前にまで来た

息を吸って吐く。夜美ちゃんが不思議そうに見て来たけどオレはこうでもしないと中に入る気にはならない
オレは結局、この人も苦手だから

ノックを二回。そして何も言わず扉を開けた
中は窓からの光だけでも十分に明るい
その中で執務机に向かってた男の人が顔を上げて見てきた

「……珍しいお客様だ。ご案内してくれたのは朝霧君?」
「理事長、どんどんゲスになってきやがってますね」

敬語には程遠い暴言を吐いたのに
うちの理事長は微笑むだけだった

  


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