「……誰だ」
青年からでた言葉は外見に似合わない。けれども私は特に気にせず青年に言う
「私?私はアヤメというよ。あなたの名前は?」
訊くと青年は考える素振りを見せる
自分の名前を考えるのに時間がいるのだろうか?彼にはいるのだろう
待っていると青年は口を開いた
「……我に、名はない」
「ないのかい?」
これは困った。それでは青年は青年としか呼べないではないだろうか
それはいろいろ不便に感じ。うーん、どうしたものか……
考えて考えて、あることを思いついた
「そうだ。私が名をつけてもいいだろうか?」
名がないのならばつくればいい。名がある者にとっては不愉快かもしれないが、青年は名がないと言った
ならつけてもいいはずだ。これで青年が嫌だと言ったら私はどうしようか?そう思ってまた考えていたら青年が言った
「……好きにしろ」
これは了承ってことかな?よかったよかった。それでは何とつけよう
じーっと青年を見つめる。青年に合った名を考えながら、青年を見つめる
すると青年の髪が光った気がした。それに気を取られよく見ると、水滴なのか雫なのか、わからないが露みたいなのが所々にあった
朝は雨が降っただろうか?それとも山の水分が彼に水を分けたのだろうか?
そんなことを思って、ひらめいた
「あなたはツユヒカリ。ツユヒカリって私は呼ぶよ」
「……」
青年――ツユヒカリは何も言わない。私の名に満足してるわけでなく、否定してるわけでもない
どこか遠く。私さえも予想できなく、そして知ることができないものをツユヒカリは見ている気がした