ツユヒカリが私のところにきて随分経つ
ツユヒカリは普段、部屋に閉じ籠っており出てこない。私は特に何も言わず、ツユヒカリの周りの整理整頓、食事を運んだりする
けれど、そのツユヒカリの食事について困ってしまった。何故かツユヒカリは食事をしない

警戒しているのか、はたまた口に合わないものばかりなのか
どちらにしろ、こんな私でも心配になってきた

なので、今日こそは訊く!!

「ツユヒカリが好きな食べ物はなんだい?」
「……何をいっている」

上半身だけ起き上がらせ、私の本を読んでいたツユヒカリ
私の質問にツユヒカリはイラつきを隠さず睨んでくる。私の質問はツユヒカリを不機嫌にさせてしまったのか……
少し悲しいな。だが、ツユヒカリにも食事というのは大切だ!
私だって一週間水だけで生きてみたが辛かった。自分の未熟さを感じたよ……

「さぁさぁなんでもいっておくれ。私ができる範囲でツユヒカリの好きな食べ物を用意しよう」
「……」

私を見下してるような目はずっと私を見てる。はて?私の顔に何かついてるだろうか?
それともここにきてまで警戒された?うーん……犬猫にも確かに好かれないなぁ
ん?でもツユヒカリは人か。犬猫と一緒にしてしまったらダメだな!

「…………く」
「く?」

よく聞こえず、聞き返す。それにツユヒカリはまた睨んできたが、私はもう一度言ってもらいたく、待った
しばらくの沈黙。ツユヒカリが視線をそらし口を開ける。今度はしっかりと聞こえた

「人間の肉が喰いたい。生きた人間のだ」

……人間の、肉?
ツユヒカリの逸らしていた目が私に向く。ツユヒカリの瞳に宿っている光は、私に危険という感情を抱かせる

私を見てるツユヒカリが珍しく笑う。その笑みは嘲笑ってるようだった
わお。ツユヒカリが笑うなんて珍しい

「……ツユヒカリは、人肉が好きなのか?人肉が、食べ物なのか?」
「そうだが?」

何でもない。当たり前
そんな風に言うツユヒカリとは違い、私の声は震えていたかもしれない
わからないから確信は持てんが

「……で「だからツユヒカリは私の用意した物を食べれなかったのだな」……?」

ツユヒカリが何か言おうとしたのに遮ってしまった。ああ私としたことが!全くダメじゃないか
けれどツユヒカリは何も言わないから続けていいのだろうか?んん……話してる途中でツユヒカリが不愉快だと言ったら止めよう

「口に合わないものを用意してしまい申し訳なかった。私はあまり人と関わらないから好き嫌いがよくわからなくてな。私自身のはわかるよ?私のことだからな。しかし人の肉か……しかも新鮮となると今からはもう時間がないかもしれない。ああ、そうだ」

私は右手をツユヒカリに差し出す
意味がわからないのか、私と私の右手を交互に見るツユヒカリに私は微笑みを浮かべる

「私では美味しくないかもしれないが、どうぞ」

ツユヒカリの纏う空気がの温度が下がった気がした
それを感じた時、私の手首は痛み出す。見ると、ツユヒカリの手に握られていた

骨が悲鳴をあげてる気がした。痛くて痛くて、そのうち折れるんじゃないだろうかと思う
泣きたくなる。止めてと言いたくなる。けれど、それは拒絶と同じだから


私はただ笑うんだ


「……何故笑う。人はこの行為に恐怖を抱き、痛みに喚くのだろう?」
「おや、私にそうして欲しかったのかい?これは検討違いをした。今からしよう」
「……もう良い」

ツユヒカリが私の手離しながら払う。掴まれていたところは赤黒い痣ができていた

「目障りだ。消えろ」

消えて欲しいのか。この所望はこの部屋から出ていくだけでいいのだろう
私は「わかった」と言うだけでツユヒカリの部屋からでた

……あ、結局ツユヒカリの食事どうしようか


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