昼時
オレたちがいるとこはフード店スペース

「……結局なんだったんだ……」

ゲーセンの後、はかきが送られてきたとメールに従って本屋へ
そして本屋でそれぞれが買いたい物が手に入った途端、またメールでこの場所に移動
……結局何だったんだろう

先輩たちがメールの指示に従いたくないと駄々をこね始め、それを宥めて無理やり勢いで連れたり
はかきが知ってる本の内容の全部暗記しているといあり得ないことを知り
いろいろあったけど結局何が目的なのか未だにわからない

「てかさー、よくバケモノは簡単に指示に従えるよねー」
「誰が化け物だ。……理事長の笑顔、嫌いですけどね。あの何考えてるのかわからないところ」
「それは心外だね」
「だって胡散臭くて遊也先輩と違う意味で気味が悪…………」
「やあ」

いつの間にいたのか
ここにいる全員が気づいていなかった。その証拠に先輩たちは臨時戦闘態勢になってあのはかきさえ固まってその人を見ていたから

オレたちが陣取ってるテーブルの隣には、優雅にコーヒーを飲んでいる理事長が……
こっわ!!なんのホラーだよ!!
いつもの微笑みを張り付けたままのような理事長がコーヒーをテーブルに置く。空になったそのカップは理事長の秘書さんが持って行った
……まさか

「理事長。今日ずっと、秘書さんにオレらのこと尾行させてました?」
「よくわかったね。さすが朝霧君」

理事長の回答にオレも臨時戦闘態勢
女性を使うなんて……いくら理事長でも許さない

計四人。しかも先輩たちとオレ
S組の中でもサイキョーと言われるオレたちが立ち上がったのに理事長の表情は変わらない
お互い見つめ合い、その間に秘書さんが帰ってくる
すると理事長は席を立ってオレたちに背を向けた

「あっれ〜?敵前逃亡かい?」
「はは、狂乱君は私の敵だったかい?負けた君は僕の敵になりきれないはずだと思ったけど?」
「っ……クソが」

遊也先輩が負けた?ゲームで?
ちょっと会話の中の単語で気になったけれど今はそーんなこと聞く暇なんてない
理事長は秘書さんを連れて歩いていく

何もしてこないのはよくわかったけれど、オレだって聞きたいことがある
もしも、オレたちにメールで指示をしてたのが理事長だっていうなら

「なんでオレたちを集めたんですか?」
「うん?」
「オレたちを集めて、今の今まで場所の指定だけなんておかしいでしょう。何が目的だったんですか?」

一歩、立ち止まった理事長が振り向く
慈愛溢れるというような笑みは気持ち悪い
その微笑みはさらににっこり笑った

「私は皆の遊びを見たかったんだ」
「は?」
「君たちは家庭の事情がいろいろ違う。休日はバラバラだ。けどそんな君たちが集まってどんなお出掛けを見せてくれるのか気になったんだ」
「……」

意味が分からない
それだけ言って理事長はまた歩き出した
秘書さんがオレたちに一礼して理事長の後を追う
姿が見えなくなってやっとオレたちは戦闘態勢を解く

あの理事長もよくわからない
オレの親を知ってるみたいだけれど、深くはわからないし
何ともやるせない気持ちのまま、残っていたリンゴジュースを飲む

「……本当に影も先輩たちも理事長さんが嫌いね」
「影さん、あの人邪魔?」
「理事長に何かしてみろ、現。お前を逮捕するぞ」
「……いや、まぁ、苦手だ」

あの何を考えているのかわからない笑顔とか
オレの両親を知っているようなことを言うとことか
どこか裏があるのは遊也先輩と似ている気がするけど、遊也先輩とはまた違う気味悪さがある

「結局何したかったんだろ……」
「青春なかった奴のお遊戯だったんじゃないの〜?」

声が上がった方にいるのは先輩たち
雪先輩はふくれっ面で食べかけのバーガーを食べてる
勇士先輩は珍しくうどんを食べてた。どこかやけ食いな気がするんですけど……
そして遊也先輩といえばそれはもう不機嫌ですと言わんばかりにスマホをいじりながらストローを吸っている
いやまあ、不機嫌なのは三人ともなんだけどね

オレより理事長を嫌ってるのはこの先輩たちだよな
誰から見てもそれは一目瞭然だろ

「ん……ハッキング先がなくなった。今日はもう関わって来ないな」
「あっそう。……この後どうすっかな……」
「あ、そうだ影さん」
「ん?」
「これ、あげる」

現が渡してきたのはあの大きな袋
何か怪しいものでも入ってるんじゃ……と警戒して受け取ったのは仕方がない

紙袋の中を覗くと、そこは一言で表すと黄色
……は?ナニコレ
恐る恐る触れてみると、ふわりとした感触。もしやこれは……

さっきの警戒心はどこへやら。急いで紙袋からそれを出す
その黄色の物体はあのゲーセンにあった大きい鳥のぬいぐるみ

「え……これ……」
「影さん欲しかったでしょ?だから取ってきたんだ!!あ、お金は気にしないでね!!僕が影さんにプレゼントしたかっただけだから!!」
「……可愛い」
「え、全無視なの?」

抱きつくとオレの体格なのもあって腕が回せない
けどぎゅっと抱きしめるとモフモフとふわふわ、ちょうどいい綿?の量なのか弾力もある
なにこれ、すっごく抱き心地も触り心地もパーフェクト!!オレの目に狂いはなかった!!

「余計なの入れてないわよね?」
「あれはクレーンゲームに入ってたのそのままだから細工してないよ」
「あれはってことは他はあるのね……」

とても聞き捨てがたいことを言ってるが今は特別許してやろう
それもこれもこの鳥のおかげだからな。この鳥に感謝しろ

もちろん、オレだってこれを貰って何もないってのは後ろめたさがある
現だからお礼は何がいいかなんて訊かないけど、それでもこれをくれたのは嬉しかったから

「現」
「なに?影さん」
「……ありがとう」

現だからなるべく調子に乗ることは言いたくない
けど嬉しかったし感謝はしてるから、ね

お礼をしたら現は目を見開いて幸せそうに笑う
たかがお礼ぐらいでそんな笑顔になるなんて、本当に変な奴






「もう一回ゲーセン行こうよ?今度はあのゾンビ全部あの理事長に見立てて殺ってやる……!!」
「私もです!!」
「俺も……」
「ほう、留年三人が……ぜひデータを取らさせてもらおう」
「よっちゃんもやりましょ?私と勝負よ!」
「よっちゃんというな。……お前とやると毎回お前が文句言うだろ」
「え、なに?カトちゃん弱いの?僕も負かしてあげるよ?」
「オレもしたいから四人戦……カーレース系のゲームがいいんじゃないか?」





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