早速学校に来てなんだが、一時間目の出席は諦めることにした
S組の教室は玄関口から一番遠い。エレベーターがあるからそれを使えば階なんてすぐ移動できるんだけど、教室までの廊下が長いのだ。仕方がない

だからと言っては何だが、一時間目は図書室で時間を潰すことにした

雨の音と紙の音が響く図書室に湿気はないからかちょうどいい気温で過ごしやすい
読書に没頭したら一時間目が終わったことに気づかないからあまりのめり込まず読み続ける

今日はそれのおかげか、誰か入ってきたのがわかった
授業中なのに図書室なんかにくるってことは、大体絞れるし厄介な奴だというのがわかる

「………ちっ。S組か」
「げっ」
「あーあ、ついてな〜い」
「……どーも。図書委員長さんと副委員長さんに……猫被り」

会って早々、人の顔見ながら失礼な態度をしてきた三人の男子はこの学校の図書委員。しかもその内二人は長と副を担当している
委員長さんは黒髪にその名前の通りの暁のような目(オレは直視できないけどそうらしい)で、副委員長は首に巻いている包帯が印象的だったりする
もう一人はくすんでいる金髪にあざと可愛いという仕草が特徴的な奴で、よく女子に混ざっていたりするっけ?

図書委員にしては威圧的な態度の最初にあげた二人は少しだけこの役目には合わないと個人的に思ってたりする
本の扱いとか物の扱いは丁寧なんだけど、その分人に対する対応が、うん………もう少し軟化すればいいと思う

「猫被りじゃないしぃ……化け物のくせに」
「大体、せーせきゆーしゅーのS組が何の用だよ」
「……普通に読書だけど。何?いちゃワリィか?」
「図書室を壊すような奴にはいて欲しくない」

図書委員長の言葉には思い当たる節がいくもある。いやけどアレはオレのせいじゃねーよ……
自分に非があるのには変わりないのかもしれないから押し黙ってしまった

が、その瞬間図書室のドアが勢いよく開く
そこから入ってきたのは、あの変態二人組だった

「うっさいなあ!!僕らS組だってここを利用していいっていうのはあるんだよ!!」
「てゆーか男三人で追い込むとか汚いわね!」

いつからお前らはそこにいたんだ
まず何よりもそんな疑問が頭をかすめたがそれを口にする前に現とカトちゃんがオレの隣りに立って一歩前に出た
そのせいか図書委員長たちが睨らんでくる
おかげで現もカトちゃんも睨み返して、嫌な雰囲気になった。勘弁してほしい……
だからいつまでもこいつらと会うとこんな今にでもケンカになりそうな空気になるんだよ。オレはケンカする気なんてないのに、困る

「お前ら授業はどうしたんだよ」
「チャイムが鳴るぎりぎりでできたんだよ!!」
「そうすれば義清に怒られる心配なんてないわ!」
「……よっちゃん、怒ってそうだな」

眉間の皺の数が増えてそうだな……
不機嫌顔がとうとう怒りに染まるのを思い浮かべて頭を抱えたくなった。なんでこいつらはこう……

絶対に義清の長い説教を聞いて何枚書くんだかわからない反省文を原稿用紙に書かされるな
考えただけでゾッとする。オレも何回か受けさせられたけどあれは精神参るんだぞ?すごくつらいんだぞ?

険悪な空気は変わらず、ただの睨み合いなのも息苦しい
それは多分、図書委員長もわかっている
このまま目に見えるように他四人が無駄に衝突し合うなんてことは

「おばさんは暇なんだねぇ。まぁ、僕より年上だからいっぱい世間の事しってそうだし?」
「そりぁあざと可愛いであれば世渡りできるなんて甘い考えを持ってるお子様のぶりっ子のあなたよりは上だもの。何もかもも、ね?」
「甘い?そりゃあてめーらみたいなふざけた常識外れな坊ちゃん嬢ちゃんのことなんじゃねーか?散々甘々に育てられているよーで?」
「お金持ちは楽できるなんて考えやめたら?これでも僕らは世継ぎが出来るぐらいには君らより優秀なんだよ?」


……あったよ
何こいつら。どんだけ血盛りなんだよ

思わず呆れていると何故か副委員長に睨まれて、それに反応した現が立ち上がってにっこりスマイルで対応
……こわっ

思わず窓側を見て現実逃避をする。窓の向こう、外では当然雨が降っていた
今日一日中雨らしいからなぁ。天気予報でそう書いてたし

「雨の臭いは土の臭いらしい」
「………へぇ。何急に」
「正確には土に還っている奴らの臭いだそうだ。光の当たらない、暗く固い土の中にいる奴らの唯一のいるという証拠のようなものらしい」
「……何が言いてぇんだよ」

表情を変えずに見てくる図書委員長を見返そうにも無意識的に目を見ないよう逸らしてしまう
それでも顔を逸らすのだけはなんとか止める。相手に対して失礼にならないようにって、守ることだから

後ろで言い合いに発展したらしい四人の喧騒が遠く聞こえた
図書委員長の視線は相変わらずオレに向いている
視線はそのままで、口が開く

「S組は、下にいる奴らのことを考えたことがあるか?お前ら異常者の下にいる――」

その先は聞こえなかった
大きくて温かい手がオレの耳を塞ぐ。すぐ後ろに現の気配がした

別にこれぐらいは平気なのに
現は本当に変だよ。オレはこんなことされるほど自分のことを弱いだなんて思っていないし、誰だってそう言うのに

「……影さん、行こう」
「おいっ」

まだ読んでいる途中だった本は現に引っ張られたことで元の場所に返せないということは容易にわかった
また来たときに何か言われそうだけどテーブルの上に本を置いて現に連れられていく。カトちゃんもあとからついてきた
振り返った後ろで副委員長と猫被りは中指立てて、図書委員長はオレが置いた本を慈しむように触れていた

変な奴ら
それは初対面の時から変わらないあの三人の印象






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