今は授業中で誰もいないはずなのに、誰かいた
美術部の道具を運んでいるんだろうけど、あまりにも量が多いか、持ち方が悪いかで今にも落としそうだった。てか筆落としてる

「……あの、手伝いましょうか?」
「うん?えーと、誰だかわからないけれどありがとう!!」

本当に前が見えなかったみたいだ
今さらだけれどもそんな男子生徒はオレに落すように道具を渡す
少しぐらい量が多くても考えて持てば落とすなんてことないのに。そんなこと思いながら口には出さず男子生徒に付いて行く

それなりに距離があった美術室の隣りにある美術準備室に入り、指示されたところに荷物を置く
美術の授業は苦手だからこの部屋には入ったことがなかったけれど、結構いろんな画材があるのがわかる
筆もだけれどキャンパスもある。ローラーとかも、ペンキも
これ全部、絵を描くのに使うのか?

「はぁ、疲れた……って君、子供?」
「……いえ、この学校の生徒ですけど」
「あ、そうなんだ。改めて運んでくれてるの手伝ってくれてありがとう。私一人だと重くてねぇ」
「……はあ」
「本当に助かった。お礼でもなんともなく、私は君の姿を絵に描きたくなったよ」
「…………絵は、好きじゃないです」

オレのことを知らないのか怯えずに話しかけてくれる人は珍しい
顔を見るとその男子生徒は分厚そうな縁黒メガネかけて、黒のくせ毛の前髪は長くて良く目が見えない
だからというか、少しばかり対応が静かになったりするのでけれど、どうしたものだろう

それに絵は描くのも描かれるのも好きじゃないからお断りしたい
見るからに簡単に引きそうじゃない男子生徒は、話しかけてきてくれる
どうやって切り抜けよう。そんなことを考えているとドアの方からノックの音が聞こえた

「……」
「来るのが遅いよ吹雪!!おかげで私が全部運ぶ破目になったじゃないか。でもこの子が手伝ってくれたから助かったよ」
「……」

マスクをして口元を隠している無言の男子生徒は入ってきて、オレに気付いてか目を見開く
驚きとあと一つの感情を浮かべてオレを見てきた
彼はオレを知っているらしい。オレはそれに居心地の悪さを感じて部屋の外に出ることにした

「待って!」と呼び止められたけれど振り向かずに進む
居心地の悪いところにずっといれるほどオレのメンタルは強くない

この後はどこに行こうか?どうやらまだこの学校特有のおかしなチャイムは鳴らないらしいし
そうやって歩く回って、ちょっとばかし忘れていた
オレだけというわけではなく、S組に一方的な敵意を持っている奴がこの学校にだっているということを

「ほう……S組の一人が校則を守らず堂々とサボリとな?」
「……げ」
「「無礼者。司様になんたる態度」」

扇子を口元に当てて大胆不敵な笑みを浮かべる女子生徒と外見が鏡合わせのように似ている男子生徒が二人
オレはこいつらを知っている。女子生徒はこの学校の生徒会長で、男子生徒たちは生徒会長の従者で副生徒会長だって

すごく面倒なのに会った
素直な感想はそれ

「よいよい。妾は寛大である。大目に見ようぞ」
「さすが司様」
「他のものにはない心の広さでございます」

今すぐここから消えたい
遊也先輩たちよりマシだけれどこの人たちもオレの中では会いたくない人たちだ
生徒会長は横暴だし、副会長共は生徒会長の意見には常に頷く
茶番劇みたいなそれは見てるオレはあまり好きではなくて、人望とかあるらしいけれどもオレはその人望の中に入らないだろう

先手必勝
思い立ったが吉日
一気に反転して走り出す

「むむ、逃げるか。追いかけ捕まえよ」
「「はい」」

はい、追ってきましたぁああああああああ!!
なんで捕まえようとするかな!?もうホント嫌だ!!

あの副会長共は絶対許さない
毎度毎度生徒会長の一声で動きやがって!!
苗字に狗っていう漢字が入ってるだけに本当に犬みてーな奴らだよ!!





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