A〜F組は当然授業がある
高校だから、文理選択があるから当然なのはそうだよな
けれどここS組は、授業がまともに行われない
「……先生、授業は?」
「お前ら大学課程まで終わったろ。それ以上勉強してどうするんだ」
「だからって自習は……」
「見てみろ。加賀なんてちゃんとしてるぞ」
「……真面目ですね」
授業なんて受けていないのにその時間に書かれている教科を出して勉強するよっちゃんは言っては悪いがバカ正直だろ
発達しすぎているオレたちS組の頭には高校過程の授業は本当にもう必要なくて、けれどこのままなのもどこか違う気がするわけで、何が言いたいかというと落ち着かないって事
今日は現もカトちゃんも家の事情で欠席で随分静かだ。はかきは当然理科準備室だし、先輩たちは基本ここに来ない
……確かこの科目の出席数は足りてるから……抜け出そう
「朝霧影!どこに行く気だ!!」
「脱走。先生、肩痛いんで保健室行ってきます」
「脱走って言った後に言うことじゃないぞ。えっと……朝霧影、保健室に行く、と」
学ランを肩にかけて廊下を歩く
保健室なんて言ったけど、脱走とも言ってしまったからこの際外に行こう
思い立ったら即行動。下駄箱のあたりまで来ると、騒がしい声が聞こえてきた。誰だよ。今は授業中だろ
オレ自身、言ってはいけないことを思っているとその声の一つに聞き覚えがあった
その声を中心に、騒いでる奴らがわかってくる。こいつら……
「お前ら授業を受けろよ!!」
「あ、番長。ちーす」
「番長もサボリすか?」
「……番長、こいつら遅刻できたんでサボるも何もないです」
「教室行けよ!?紅ノ原は……うーん……」
「ひでぇ!紅ノ原さんだけは何もなしすか!?」
いや、だってなぁ……
紅ノ原は頭はいい方だし普段やる気がないだけで世渡りとかできるし、何より強くてオレの舎弟の中じゃトップだ
最悪S組に入れるんじゃって思うけど紅ノ原は異名持ちじゃないし
そうでなくても結構すごい方なのだ
だからどうも、オレからしたら注意がしにくい
……別に特別扱いってわけでもないんだけど。信頼がおけるっていう点では確かに特別かもしれないけど違うから
「仕方ねーだろ。紅ノ原さんは2だぞ」
「番長だって信頼を置いてる」
「まさに右腕!!」
思わずヤバいと焦った
確かに紅ノ原は信頼が置けてオレの隣にいるけど右腕じゃない
というか、こういう話になるとある一人の神経を逆なですることになる。その一人っていうのは先日久しぶりに来てくれたキカイで、こんな話、聞かれていたら大変な事になる
一応キカイを知ってる紅ノ原も嫌そうに顔を歪める
キカイは紅ノ原より強いし、互角の戦いになるのは星ぐらい。すぐさま紅ノ原はキカイの逆鱗に触れそうなことをいった奴の頭を殴った
「うがっ!?」
「お前……今日の夜に俺の家に災いが来たら一生恨むからな」
「え、ちょ、紅ノ原さん!?」
怒るというより苦虫を潰したような気まずい顔でどこかに行く紅ノ原
続いて怒らせたかもしれないと付いて行く奴と野次馬根性で付いて行く奴ら
騒いでる原因がいなくなって、下駄箱は静かになった
……紅ノ原に同情してキカイに言っておこう
もうなんか疲れたし、このまま廊下とか散歩しよ。この学校、広いし
prev/
next