※朝霧星視点

俺の姉、朝霧影は知る人ぞ知る元ケンカ最強の番長……いや、化け物だった
だったていうのは、すっかり姉はケンカからなるべく離れ、その噂にも似た畏怖の話は、もうあまり知れ渡らなくなったからだ
それともうひとつは、姉が化け物ということを拒否しているからなんだけどもこれはあまり関係ない

自分の姉だけど化け物と呼ばれることをどうこう思わない。実の弟である俺も時たま規格外のことをする人外と見てるんだから
何故姉が強いのかも知っているけど、これは本人も知らない……忘れてしまったことだから言わないでおこう
俺の中に残る良心で

姉が化け物と呼ばれ、遠巻きにされるのはどうでもいい
どうでもいい風に考えれる
俺が一番嫌なのは、その姉が化け物なら弟も化け物と言われ、見られることだ

「最悪だよ」

服にかかってしまった汚れに苛立ちが増す
服だってただじゃない。服を新しくかったりなんてしたらお金がかかるんだよ
なのに、最悪だ。汚れは付いてから時間が立っているのか、少しだけ乾いてる。これじゃあシミになって抜けない

折角の服がダメになってしまった。たったそれだけで?と思うかもしけないけど、俺はお金が無駄にできない状況にいるから怒りたくなる
怒りのままに目の前のを蹴りたいけど、俺はその役目をしたくないからなんとか踏みとどまった

「おお!星も派手にやったな!」
「……やりたくてやったんじゃないよ」

こんなところで、顔に汚れがついてるのも気にせず満面の笑みというのを浮かべる荒は楽しそうに来る
何も楽しくないだろ。俺はお前の感性が本当に理解できない

楽しそうに、遊んできたというような笑みを浮かべてきた荒の服にも汚れは付いてた
ただ、俺よりもあちこちに、明らかに気にしなかったから付いたと言った感じだ

「他は?」
「わかんね。けど俺に来た奴らはちゃんと始末したし、あとは電雷さんかなぁ」
「……可哀想に」

本当に、同情してしまう
あんな、異常な奴の相手にさせられるなんて

どうせすぐこんな考えも気持ちも忘れて俺は普通に振るまうだろう
俺はそういう風にしなくちゃいけないんだから、気にしない。むしろ早くここから出ていきたいんだ

「く……そ……」
「ん?まだ意識あるぞ?」

今まで無言だった男が声を出す
わざと意識を残しておいたんだよ。すぐやるなんて考え無しなことしない
男は少しでも距離を取ろうと身体を動かすけど無理に決まってる。男の足はもう使い物にならないし、体力もないに等しい

そうしたのは俺だけど、罪悪感なんてわかない
わかないよう、意識してる

「貴方もバカでしたね。次はよく考えて行動したほうがいいですよ」

次なんてないだろうけど
俺は男に近づき、囁くように言った

「荒波と氷の姫だけじゃなく、偽人と呼ばれてる俺も巻き込むからです」

加害者はあなた
俺らは被害者なんですよ




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