きーんコンッ……カコーン

清々しい朝
学校にしては可笑しなチャイムが鳴る。授業が始まる合図がなり、各クラスに生徒が入っていった
そんな誰一人といない廊下を、悠々と歩く生徒が一人
肩に掛けられているだけの学ランは、風になびきながら落ちる気配はない
髪も目も黒。学ランやズボンも黒。唯一の白といえばシャツだけという少しだけ妙な雰囲気を纏いながらその生徒は廊下を歩いている

誰一人、その生徒に注意も何も言わない。生徒はとにかく、先生さえも
その生徒が誰だか知っているし、知っているからこそ誰も話しかけたりしない

『〜♪〜♪』

ケータイが鳴る。曲を聞くと何かのアニメソングのようだ。生徒は胸ポケットからそれを出してディスプレイを見てから早足で廊下の角を曲がって消えた


「うっそー。いないー」
「ええー。ちゃんとこっちって書かれてたのにー」

学ランの生徒が去った廊下に走ってくる生徒
明るめで、けれども残念そうな声が廊下に響く
日本人ではないと思う金色に近い色の長い髪に青色の目はどこかの王子様のような容姿の男子生徒と、こげ茶の髪を背中まで伸ばしてどことなく気品あふれる女子生徒から上がったようだ

「ちょっとー、あんたについてきたのにいないじゃなーい」
「そんな文句言うならついてこないでよ!彼女は僕のなのにぃい!」
「誰があんたのよ!」

睨み合うように顔を向い合せる二人。そこでケンカが始まるのかと思ったが、どうやらそれはないらしい
男子生徒がすぐさま視線を移し、手元のアイポットを操作する。画面に表示されてるのは数個の動画

「あ!いたいた!」

男子生徒から歓喜の声が上がる。その声に女子生徒も画面を覗き、喜びに顔を変えた

その動画の中にいるのは、先程の学ランの生徒
時たま画面の向こうからこちらを見てる動作をしてる

「早く行かないとまた逃げられちゃう!」
「僕が先に会うんだよ!」

二人はまた言い合いしながら走り出した



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