ラスボスを前にしたときの勇者の気持ちってどんなんだろう
今までの憎悪?それともなんとも言えない達成感?
オレはそういうのするとラスボスん時絶望みたいな気分になる。理由は簡単。装備がちゃんとしてないから

いやちゃんと何時来るかとか考えてれば準備満タンさ
けど金がない何時くんだよラスボスとか思ってるときに会ったあの絶望。もうホント、RPGって苦手だよ多分

で、その気分はゲームでもなんでもない時にも味わう

最初は誰もいない教室
他の奴らがいないのが不思議だっけどもこれ幸いと自分の席に座った
そこで気付く。机の上に置かれてる白と黒のポーン
チェスの時に使う駒がなんでここに……

「くすくす」

含み笑い
無邪気な笑い
不気味な笑い

その笑い声に顔を上げれば教師が使う机みたいなのに座ってる男がいた
男というか、オレの知ってる先輩。オレが一番嫌いな先輩
その先輩は着物か浴衣かを肩にかけ、笑みを浮かべたまま黒のキングを手で弄ぶ

これらの状況で冒頭のような気分です

さっき水道水だけども水分補給はした。なのに喉がカラカラに渇いていく気がした
唾液を呑み込むけど、足りない

黒のキングを握り、先輩はゆっくりとした動作で机から降りる
奇抜ともとれるオレンジ色の髪が静かに揺れた
スローモーションのように先輩が近づいてくる。逃げ出したいのに、体が金縛りにでもあったかのように動かない

机を挟んだだけしかない距離になって先輩の顔がよく見える。満面の笑みで、けれど気持ち悪い
先輩がキングを持っていない方の手を伸ばしてきた
その手はオレの首に触れる。確かめるように、艶やかに。まるでヘビが這うように

「せ、んぱ、い」

途切れ途切れの呼び掛けに、先輩は笑う。嘲笑う
首を絞められ息ができなくなった。先輩が手に力を入れたみたいだ

苦しい。苦しい
手が反射で先輩の手首を掴む。拒絶し出す

「……ねぇ、バケモノ」

愉しげな
楽しげな
先輩の声

「ゲームをしようよぉ」

先輩の目はどこまでを
オレを見下していた





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