「はぁ」

ため息が出た
ほぼクセになっているからそれは無意識だった
オレは「疲れたなぁ」と自分の手を眺める

春らしい温かい風が吹く屋上で寝っころがっていれば授業が始まるための鐘がなった
この学校独特の、歪で、リズムがなくて、音が外れた音
オレは頭の片隅で授業に遅れるって思いながら目を瞑った

ーードゴンッ!!

眠ろうと思ったら大きな音に目を覚ます。小さく舌打ちして音の根源を見た
学校の校門近くに黒い塊が見える。でもそれは、不規則に動いてる。よくよく見ると校内になかったはずのドラム缶があった

『出てこいモノクロ破壊者!今日こそセキネンの恨みをはらさせてもらうぜ!』

一体いつの時代の売り文句だよ。てか積年って意味わかんのあいつら
あーだりー。よっちゃんに一昨日怒られたばかりなのにまた怒られなきゃいけねーのかよ

「マジ死にさらせ」

 * * *

【モノクロ破壊者】
最強の力を持つチート人間。あくまで『力』が最強なだけ
並みならぬ身体能力も持ち、頭脳明晰の元番長
ただ、身長が低く童顔のため小学生男子に見られやすい無表情チビである

これが出回っているオレの異名と説明だろう
異名が付いてから時は流れたので、今ではその説明にはウソかホントかわからない尾ひれも付いて回っているかもしれない
オレ自身、そういうのは興味ないので特に気にしないが、これはこれで面倒だ。めんどくさいのは嫌いだ

「ふぅあ……」

眠い。眠過ぎる。今日はたまたま早起きしたからか欠伸が止まらない
一回じゃ収まんないみたいなのでもう一度欠伸をした

「……番長。眠いのはわかりますけど山になってる屍の上に座って欠伸をするのは悪趣味」

声のほうを向けば怠い表情をした男子生徒。声でわかってたし、てか気配掴んでたから驚かない

「カッコよくね?」
「ないです」

男子生徒――紅ノ原にブーイングを送った。が、紅ノ原はため息を吐くだけだった
つまんね

紅ノ原は中学からの付き合いで、中学のとき訳あってオレは番長と呼ばれていた。その名残からか紅ノ原はオレを番長と呼ぶ
まぁ紅ノ原は副番長とかナンバーツーとか呼ばれてた。紅ノ原はオレのただの舎弟って言ってるけど

「ねぇ、制服汚れてない?」
「黒だから目立ってないです」
「いやワイシャツ」
「……黒い染みなら」
「ちっ」

もうちょっと注意してやるべきだった。寝不足のせいで注意散漫になってたからなぁ
黒い染みならいいか?でもなかなか落ちないんだよなぁ

「掃除しといてー」
「もう他の奴等に連絡やりました」
「サンキュー」

紅ノ原のこういう気が回るところは好きだ。言わなくてもやってくれる奴は好感度アップだと思う
山から降りて地面に立つ。制服の汚れを払った

「そろそろ教室行こっかなー」
「そう言えば風紀委員の長がなんか叫んでました」
「……」

風紀委員の長……委員長……ってよっちゃん?

「それは早く言え!」
「スミマセンデシタ」

片言の紅ノ原に突っ込みをいれる余裕はなく、オレは急いで校舎に向かった



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