【誘惑の花園】
その笑みは老若男女を惑わし虜にする
彼女が望んだ物は彼女の元へ
遊女なんかとはまた違う気品ある笑みを浮かべ、女王なんかとは違う甘くも鋭い目をする
誰もが抵抗できず、または抵抗なんて忘れて誘われるがままに囚われるだろう



………なんかさ、この文だけで本一冊作れんじゃね?絶対作れると思うんだ。悪女ものとして
オレは図書室のイスに腰かけながら天井を見上げる。ガラ悪い?今更だよ
現に図書室にはオレが入ってきた途端、人っ子一人いなくなった。オレはそんなに恐怖の対象なのか……軽くショックだぞオイ

だがまぁ、なんというか……

「ね〜、読書ばかりしてないで私に構って?」

カトちゃんがいるからか、男子の気配ヤバいんだよなー
壁の向こうまで最近は気配が読め始め、最悪集中したら校舎内全部の気配が読めそうで怖い。マジで怖いのだ。怖くて怖くて、……特にはなにもない

本とカトちゃんをそっちのけて廊下側の壁を見ていたからか、両頬を挟まれて無理矢理前を向かされた
そこには涙を目にため、悲しそうにオレを見るカトちゃん

「……なんで、私を見ないの?」

計算されたように一筋の涙がカトちゃんの頬を伝う
男なら誰だって欲じょ……しなくても見惚れるのではないのだろうか。それほどまでに彼女の美しさはとまらない。例外はいるけどスルーで

話を戻して……そう、『男』ならなにかしら感じんだろう
だが、残念ながらオレは

「カトちゃん、オレ何度も言うけど女」
「ちっ」

小さい舌打ちされた
涙なんてあった?と言わんばかりにカトちゃんから涙はなくなっていた
すげー。演技はオレの弟と同格かもよ?……いやあいつが上か

ついでにオレの性別を今まで男だと思ってた奴は怖い目に見せるぞ
オレは生まれてから一度も性別なんて変えてない歴とした性別学上女性だ
この容姿と口調、その他モロモロの要因によってオレを男と思っている奴はいる。ガチもんの女子からの告白にはどう対処したものかと考えたさ

さて、カトちゃん―――オレの目の前で爪の手入れを始めた加賀時乃はオレの親友(?)なのだが、残念なことに彼女
加賀時乃―――カトちゃんは男が嫌いな正真正銘のレズであるとオレは思う

……世界って、広いね。オレを女と知りながら告ってくる女子はレズ疑惑の子でしたよ
カトちゃんにとってはオレの容姿とか口調がまたいいと言って……なんだっけ?自分が受けでもとか……受けってなんだ?そこら辺の知識が曖昧だからちょっと困る

視線をまた本に戻して読書を続ける
本を読むことは好きだ。ケンカケンカばっかしてるより読書の方が楽しい
本の世界に入れば自分のことじゃないのに楽しめるんだ。小学校の時はあまり本に触れる機会がなかったから中学の終わりごろにハマった。人は楽しいと思ったらクセになるからね

今読んでる本はとある少年のお話
小さいころに酷い事をされて、人を信じられずいる
少年が行うことは世界への復讐。ちゃくちゃくと進められて行く物語

グロいのは平気。まず自分からグロい光景作りかかってるし
ハッピーエンドもバッドエンドも、恋愛でも悲恋でも復讐劇でも
まあ、なんとなく腑に落ちるから読む。そして、読みながら思考の渦に落ちていく

――なんでそんなことすんだよ。きっとこいつ死ぬ……あ、死んだ。やっぱりかー。…………この場合、悪いのは誰だろう。理不尽不条理?んなのこの世界じゃ当たり前……ってこいつ生きたの?ああ、悪運強いんだ。……人は本当に欲深いというか、求めるものさえなければ求めるという行動は起きないんだろう。と言うことは人自体が有害……だったら家庭が築けるはずがない。そこで起きる全てのことが彼にとっては嫌、負の感情を刺激するという因果関係が出来上がる。彼は何が望み……って復讐か。でも復讐って虚しい。人は存在する限りその個体を増やしつつあるそれすべてに恨み、もとい一人の執念までともいえる憎悪を向かわせることは―――

そこまで考えていた頭より体が反射的に動く。本を閉じながらテーブルの上に置いて行儀が悪いけどテーブルに片足をのせて反対側にいるカトちゃんに抱きつく
驚いているカトちゃんは後ろに体重をかけたみたいだ。イスが床に向かって傾く

「(好都合)」

なんでそう思ったのか。多分体に染みついた癖だ
カトちゃんの頭を抱えてオレより大きめの肩にかけてた学ランをオレとカトちゃんにかぶせる
これから起こることが、わかったから






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