倉庫 | ナノ




























来客を知らせるインターホンに急かされながら玄関のドアを開くと、そこには得意げに口角を上げた南沢さんがいた。月山国光のだっさいジャージ(ジャージに格好いいも何もないかもしれないが)で片手にはコンビニのロゴが入ったビニール袋を下げている。片側に流している前髪をいつものように右手でさらりとかきあげて、よぉ倉間、と色気たっぷりに言う南沢さんを俺は呆れを交えたやや冷めた目で見た。なにしに来たんだ、この人。

「…何、やってんすか」
「何って会いに来てやったんだけど」
「誰も頼んでないですけど」

白けた視線を向けてそう言えば彼は、何だよ可愛くないなとまた前髪をかきあげる。それから手に持っていたビニール袋をずいと差し出した。なんすかこれ。

「やるよ」
「は?」
「は?じゃなくて。お前にやるって言ってんの」

そう言って南沢さんはもう一度袋を押し付けるように突き出してくる。行動の意図がさっぱりわからないが、押し付けられるがままとりあえず袋を受け取った。がさりと白を開いて中を覗くと、まず目に入ったのは黒とオレンジ。それから如何にも、な顔をした南瓜の絵。もしかして、もしかしなくともこれ。

「ハロウィン、っすか?」

南沢さんを見上げるとばちりと目があった。途端に彼は顔を赤くして目を逸らす。あ、照れたってことは正解か。へぇ、南沢さんも可愛いところあるじゃんね。心の中でにししと笑いながら、表ではありがとうございますと素直にお礼を言っておく。

「でも急にどうしたんすか、わざわざこんなことやるような人じゃないっすよね、南沢さん」
「お前な…」
「事実を言ったまでですけど」
「…まぁなんだ、その…。去年みたいなことになるのはもう勘弁だからな」

もごもごと口ごもりながら南沢さんはそう言った。相変わらず顔を赤くしたままだ。去年?ああ、あの悪戯のことっすか。猫耳にメイド服、箒のオプション付きであーんなことやこーんなことしましたよね…懐かしいっすね。

「でもあれは南沢さんがお菓子くれなかったからじゃないですか」
「そうだよ、お前は去年もそう言ったよな。だから今年はあげたんだ。それで倉間」
「は、なんすか」
「お前からは?」
「へ、?」

南沢さんがにやりと、さっき俺と会ったばかりの時のように口角あげた。トリックオアトリート、倉間?彼の唇が言葉を紡ぐ。あ、まずい。これってまさか。

「…………」
「菓子くれねーなら悪戯していいんだよな?」
「えーと…その、」
「じゃあじーっくり悪戯させてもらおうか、典人くん?」

凄まじい色気を放つ彼の顔が近づいてきて、耳元で吐息混じりに囁かれてはもうどうすることも出来なくて。そのまま手首を掴まれて家の中に、そして俺の部屋に連れ込まれた。

「みな、みさわ、さ…んむ、ぅっ」

口にしかけた言葉ごと熱を帯びた唇で塞がれて、勢いよくベッドへダイブ。電気の点いていない薄暗い室内で彼の欲情に塗れた瞳だけが妖しく光って見えた。






吼えよ遊べよ



(暗闇に於いてわたくしとは、)





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thx 花洩