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のどかな土井中野高校では、今日もグラウンドからバットを振る音だけが聞こえる。
時刻は放課後、といってもまだ空は青く昼間と言っても通用するぐらい明るい。
私はグランドの一角にある、野球部のベンチに座りグランド全体を眺めた。
ああ、今日も広々と、寂しいな。
「球人、寂しくない?」
バットを振り続ける野球部キャプテン、二屋球人に話しかければ球人は素振りをやめ、その場にバットを置いた。
そしてバックにうさぎやくまを背負い、こちらを向く。
「さ、寂しいよ。でも、まだ千鶴ちゃんが居るから」
「球人……」
泣きそうな球人の表情に私は思わず涙が溢れてきた。
「ごめんね、私ノーコンだからキャッチボールも出来なくて」
私の言葉に球人は首を横に振り、そして笑顔を浮かべる。
「気にしてないよ、確かに辛くて気にしてたりするけど……」
「どっちだよ」
私はグランドから立ち上がり、スカートについた砂を払い落とす。
足元に転がっていたボールを一つとり、上へ投げ空中でキャッチする。
「よーし、球人グローブはめてキャッチボールしようか」
「出来ないんじゃないの! 何、僕に当てるつもり!?」
「成せばなる、成さなければならない。さあ行くぞー!」
私はミットや、防具をはめた球人に向かって投げればボールは大きく軌道をそれ後ろの壁にめり込んだ。
お互い、無言になりただ顔を青くさせる。
「……その、守備練習する? 私打ち上げるから」
「……うん、その方が命が助かりそう」
私はボールを入れる籠の近くにあったバットを取り。
ボールを一つとれば真上へ投げ、脇をしめ肩の力を抜き勢いよくスイングさせた。
木製のバットは微かにしなり、ボールはセカンドの方へと飛ぶ。
球人は走りながらボールを目でおいグローブの中に収めた。
「はーい、次行くよー!」
ボールをまた取り、バットに当て空へと飛ばす。
そろそろ、転校も考えようかな。
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