stage.0 動き始めた物語。

 白いページを捲り新たな一ページが生まれる。

「功ちゃん、将君って今日来るの?」

 玄関の扉をチャイムも鳴らさず開け、玄関さきで部屋に響き渡るほどの声で部屋の主に叫ぶ。
 美咲は靴をほるように脱ぎ捨てると、ドタドタと音がなるほど乱暴に床を走った。
 そして、一つの部屋のドアの前に立つと美咲は勢いよく扉を開け放ち、ベッドの主に向かって一歩、二歩下がり、距離をとると次の瞬間走りだし、ベッドへダイブをした。
 ダイブをするとともにベッドのスプリングが軋む音と布団の下からうめき声がし、美咲が更に体重をかけると、功がふとんから顔を出し。
 上に乗りニコニコと微笑んでいる美咲を眠たそうな眼差しで見た。
 暫く無言で見つめあうと功は欠伸をし、もう一度寝直そうと布団を被る。
 だが美咲はそれを阻止するかのように掛け布団を引っ張りあげた。

「起きろ功ちゃん! 今日将くん来るって昨日言っておきながら自分起きなくて人に任せる気!?」

 美咲は声をあげ布団を引っ張ったりと叩いたりとすると功は渋々と布団から這い出て頭をかきながらリビングへと歩きだした。
 美咲はそれを確認すると布団を整え。
整え終えると功の後を追いかけ冷蔵庫からお茶を出し飲んでいる功を眺め飲み終わるのを待った。
 功は一度コップから口を離し美咲をみる。

「うん、美咲になら将のこと任せれるかなと思ってな」

 美咲はまだ寝ぼけているのだろうかと思い密かにため息をつくとキッチンへと向かいつつ愚痴を溢した。

「そんな軽々と赤の他人に押し付けるな! ってかさ本当功ちゃん不用心だよ玄関の扉鍵かけてないし……」

 冷蔵庫から卵を取り出すと、割りフライパンに落とし焼き始める。
 ジューっという音とともに香る香ばしい匂いに功は顔を覗かせると嬉しそうに顔を緩め微笑んだ。

「美咲だから任せれるんだよ。」
「そんな甘ったるい口説きにはこの美咲さんは乗りませんことよ?」

 美咲は赤くなった顔を紛らわしすように何時も使わない口調で返し料理に集中した。
 目玉焼きを作り、焼き上がると功が用意してくれた皿にそれを乗せていく。
 するといきなりチャイムが鳴り、美咲は後のことを功に任せると玄関にいき扉を開けた。

「どちらさまでしょうか?」

 扉を開けるとそこには美咲と同じくらいの年の少年がカバンを持ち片手にはサッカーボールを抱えて立っている。
 美咲は誰だろうと首を傾げると少年は顔を赤くさせ勢いよくあやまりだした。

「すっすみません。あの僕…部屋間違えました!!」

少年はそれだけ言うと走りだし階段を降りていき辺りには勢いよく階段を降りる音だけが聞こえ。
美咲は変なのと思いドアを閉めようとしたが何か思い出したのか動きが止まり冷や汗が流れた。

「…今のまさか将くん?」

美咲はもう一度外を見て先程の少年を思い出し乾いた笑いをうかべる。
そして一度中に入り功に声をかけると、外に飛び出し少年の後を追い掛けた。
下に行くと少年は郵便受けを見て唸っており何度もマンションの部屋の番号を確かめており。
美咲は少し声をかけるのにためらった、が意を決して声をかけようと肩を叩いた。

「あっあのーもしかして…将くん?」

「えっあっはい?」

少年はいきなり肩を叩かれ、声をかけられた事に驚き、声を上げ声をかけてきた相手を見て先程見た人だと気づきどうしたのかと首を傾げる。

「えっと将くん…そのさっきはごめんね。まさか将くんだと思わなくて」

将は更に首を傾げ「貴方は誰ですか?」と声をかけると美咲はハッとし、勢いよく自己紹介をしだした。

「あっあの私、浅倉美咲っていいます。将くんのお兄さんのお手伝いをやらせてもらってます。ちなみに家は隣でいつもいつも将くんのお兄さんには良くしてもらってます。これからよろしくお願いします!!」

美咲は勢いよく話した事に息をあげ肩を揺らしながら呼吸をしていると将はいきなり申し訳なさそうに顔をしかめ頭を下げた。

「今まで兄がお世話になって…すみません」

「あっいえ、そのこちらがお世話になってる身ですので」

美咲は将にならうように頭を下げ、暫くして顔を上げると将の手をとり部屋に戻ろうと歩きだした。

「えっと…とにかく一度家に、あっそうそう将くん私のこと美咲でいいから。それに同い年なんだから敬語もなしね?」

「あっはい!…じゃなかった、うん宜しく美咲ちゃん」

将は手を握る力を強めると美咲は恥ずかしそうに笑い。
その後二人は階段を上り部屋に戻ると朝ごはんが出来ており身支度を整えた功が座って二人を待っていた。

「おかえり美咲。それと将もお帰り」

「ただいま功ちゃん」

「ただいま功兄。これからお世話になります」

将は頭を下げていうと功は将の頭を撫で「自分の家だと思っていいからな」と言い二人に座るように促し、手を合わせ三人でいただきますと言うとそれぞれ思い思いに朝ごはんに手をつけはじめた。


「ふーん将くんって前は武蔵森学園に行ってたんだ。どうりでサッカーボール持ってたわけだ」

美咲はパンを口に放り込み、飲み込むと将の話に興味津々に聞きいる。
将は食パンにイチゴジャムを塗りながら苦笑いした。

「でも三軍止まりで…本当、僕全然だめで」

「でもさサッカーこっちでも続けるんでしょ?」

目玉焼きを箸で挟みながら美咲は将に言うと、将は真剣な顔をし、手を強く握り頷いた。

「うん。武蔵森では駄目だったけど今度こそしたいんだサッカー」
「私好きだな、そうやって夢を追いかける姿」

美咲は微笑み挟んでいた目玉焼きをペロリと食べると「ごちそうさま」と言い席を立ち上がり流しにお皿を置き洗い始めた。
少しのあいだ水の流れる音しかしなず、将は皿に残っていた目玉焼きを頬張ると空になった皿を美咲に渡し。
美咲は「ありがとう」とその皿を受け取り。
洗剤のついたスポンジでそれを洗い、泡をゆすぐと食器を乾燥機に置き、食器の重なりあう音とともにキュッと蛇口をしめた。

「よっし、なら将くんお買い物がてらにお散歩しようか」
「えっ」

将は美咲の言葉に戸惑い、驚くと美咲はそれに可笑しそうに笑った。

「だって将くんまだこの辺り知らないでしょ?だからお買い物ついでに案内しようかなーって思って」

だめだったかな?と不安げに聞く美咲に将は慌てて首を横にふり気恥ずかしそうに笑った。

「その、ありがとう」
「いいのいいの、私出来るのってこんなことしかないし」

エプロンをとり椅子にかけると美咲は一旦自分の部屋に戻り、かばんと財布を持ってきた。
功は財布から2000円取り出すと美咲に渡し何か無くなってたら買ってきて欲しいと言い美咲は了解と手を頭にあて敬礼をし、将の手を取り家を後にした。

その日みた空は澄みきった青だった。
あとがき

前から書きたかった原作沿い長編。
まだ始まったばかりで最後まで頑張れるか不安ですがよければ最後までお付き合い宜しくお願いします。

2006 10/30

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