セミ爆弾
ミンミンとセミが鳴く昼下がり。私はある生物が地面に転がっているのを眺めていた。
「どうしたんだ?」
先に前を歩くキョンが、私が来ないことに不思議に思い振り返り声をかける。
いやはや、そのね。
「……セミ爆弾がね」
「セミ爆弾?」
足元に転がっている生物、それはうごうごと動く足。時々ジジッと羽を震わせ、飛び上がろうとする。その名は蝉。
皆さんはセミ爆弾をご存知でしょうか。セミ爆弾、それはセミが最後の力を振り絞って人間を驚かせるという、セミの感動的な攻撃なのだが。
「こ、怖いんですけど」
セミは先ほどから動かないが、時々足が動きまだ生きていることを物語っている。
「走って来ればいいだろ」
「む、無理、無理です!」
私は顔を思いっきり横に振り、キョンに追い払ってと言えば。キョンは苦笑いを浮かべ、セミの近くを通ればセミは最後の力を振り絞り空へと飛んでいった。
「あ、ありがとう」
「お前、セミ捕まえられるのになんで死にかけのセミは苦手なんだ?」
私はセミがいなくなった地面を見ながら、キョンの元へと駆けていけば。キョンはセミの飛んでいった方向を眺めながら、尋ねてきた。
「いやあね、セミが突然飛ぶのが嫌でさ。まだわかっているならいいんだけど」
「セミも不敏だな」
キョンは私へと顔を戻し、私はキョンの腕を取り。キョンの顔の前で指を振る。
「とにかく、早く駅に行かなきゃ。ハルヒにまた叱られるよ」
私はキョンの腕を離し、先へ走って行けば。私はまたすぐに止まることになった。
そこには言うまでもないが、セミが一匹転がっていた。
(2007 08/18)