ハルヒの夢
放課後、夕日の差し込む部室。何故か他の団員は帰っており、今や古泉くんと二人きり。
「名前さん」
日誌を書いておれば、横から声をかけられ振り返れば。古泉くんの顔が近くにあり、「なに?」と聞く前にその唇を重ねられ。
突然のことにくぐもった声が漏れ、恥ずかしさに古泉くんの胸を押せば。古泉くんはあっさりと退き、私はその隙に逃れようと部室のドアへと行くが。
鍵がかかっており、回せどもその扉は開かず近づく古泉くんに私は逃げようと部室の奥へと行くが、それは相手の思う壺だった。
「古泉、くん。どうしたのいったい」
「どうしたもなにも、あなたが好きだからした行為ですよ」
「お、おかしいよ! だって私たち異世界人に超能力者だよ!? 恋愛感情なんて」
古泉くんは、それに動きが止まりしばらく口元に手をあて考えごとをするが。すぐにまた笑顔を浮かべ歩をこちらに進める。
「確かに、始めこそはあなたのことを恋愛対象としてではなく。観察対象として見ていました」
じりじりと、にじりよってくる古泉くんに私は逃げ腰になりながら後ろへと下がる。
「しかし、あなたを知るたびにあなた自身に惹かれたんです」
胸がうるさいくらい脈打ち、背中が逃げ場を失えば、それはなおいっそう速くなる。
「名前さん」
古泉くんの手が伸び、私の髪をすくえば。愛しげに目を細め、口づけをし私の目を捕らえる。
「愛してます」
近づく彼の顔に、囁かれる言葉に全てとろけてしまいそうだ。
私は力の入らない脚を無理矢理立たせ、古泉くんの腕にすがりつき目を閉じれば全てに身を委ねた。
「と、いう夢を見たのよ」
「……」
目を爛々と輝かせ、嬉々として話すハルヒを後目に私は深いため息をつく。
「ハルヒ、それは他所では話さないように」
(2007 08/03)