帰り道

 帰り道いつもは同じ道を歩きたいものだが時々違う道を歩きたくなるものだ。
 いつもは私は十代目の後ろをコッソリと電信柱に隠れて後を追うのが習慣になっていた。
 そのたびに私に声をかけてきて「一緒に帰ろう」と、いう十代目には涙が出るほど感激した。
 その十代目が今日は風邪をひいたらしく、学校に顔を見せなかった。
 そこで私は十代目のお見舞いにと、今こうしてスーパーへと来ているのだが。

「なんで獄寺もいるんですか」

 売り場に並ぶ色とりどりの果物を眺めながら、後ろにいる獄寺に話しかけた。
 隠れているつもりなのかどうなのかはわからないが、獄寺はカートの後ろに隠れてこちらを覗いており。
 道行く人には怪しげな目で見られている。
 出来ることなら他人のふりをしておきたいものだ。

「べ、別にお前が十代目のお見舞いに変な物渡すんじゃねえかって心配で着いてきたわけじゃねえからな!」
「そう言う理由なら早く出てきて言ってください、私まで恥をかくでしょ」

 顔を真っ赤にさせながら私に怒鳴る獄寺は自分では言ってないつもりなのだろうが、着けてきた理由を喋り私の横に並んできた。
 本当、敵なら嬉しい素直さだが味方ならピンチに追い込むほど厄介なものだ。そろそろ治してもらわなければ。

「で、何買う気だ」
「林檎」

 手にとり眺めていた林檎を獄寺に手渡し、言うと獄寺は「ちゃちいな」と眉を寄せいい林檎を籠に戻しスーパーの奥へと入っていった。
 そのうち戻るだろう、といくつか選んでいると獄寺が籠を持ちながら帰ってきた。

「普通お見舞いと言えばこれぐらいだろ」
「貴方は私を金欠に追い込みたいんですか」

 籠いっぱいに乗った彩りどりの果物に私は呆れ、籠についていた値札を見て気を失いそうになった。

「私には無理です」

 籠を押し返し、また林檎を選んでいると獄寺は私の手を掴んだ。
 一体なんだと、少しうっとうしかったが振り向くと獄寺はまた籠を押し付けてきた。

「だから、」
「割り勘」

 無理だ、と私がまた言おうとする前に獄寺は言葉を遮りそう言った。
 しばらく呆然と先ほど言われた言葉を考えていると、獄寺は「割り勘」と繰り返した。

「……四分の三じゃだめですか」
「わかったよ、なら俺は四分の三払うから残りは払えよ」

 獄寺は果物籠を私に押し付けると、レジへと向かった。
 その後、レジでお金を払い終えればスーパーを後にし商店街のゲートをくぐり十代目の家へと向かう。
 先々行く獄寺の後を私は小走りで追いかける。
 そしてその背中を眺め、十代目とはまた違う感じに少し胸が暖かくなった。

「獄寺」
「何だよ」
「たまには一緒に帰るのもいいですね。でも、もう少しゆっくり歩いてください」

 十代目は私に合わせて歩いてくれましたよ? と言うと獄寺は渋々と言った感じに少し歩みを遅くなり私に合わせてくれた。
 その時何度も何度も「お前のためじゃないからな!」と顔を赤くして言う獄寺は何だか新鮮で、私は思わず笑ってしまった。

(2006 12/17)
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